2008年5月26日月曜日

オオカミらしくを目指して! (平成20年5月)

例年になく早い雪解けを迎えた4月,旭山動物園は遅い冬ごもりを迎えました。
今年は4月8日から25日までのわずか18日間です。

前半は映画,ドラマのロケの対応,中盤からは獣舎の改修,
修理等々あっという間の冬ごもりです。
飼育係的には,雪割り作業が皆無に近く,共同作業も超順調で,
夏期開園に向けての取り組みもエンジン全開です。
どんな仕掛けや情報発信があるのか楽しみです。
でも雪が消えるのがこんなに早くていいのか?
こんなに早く芝生が緑になっていいのか?
一抹の不安がよぎりますね。

オオカミの森の建築も急ピッチで進んでいます。
もちろんオオカミたちも元気です。
オープンの時にお披露目する3頭は順調に旭山の風土に慣れつつあります。
3頭の来歴は,体毛が黒く不気味な雰囲気を持つカナダから来た1才の雄,
雌の兄弟と秋田市大森山動物園から来た

4才になるベージュ系の体毛の雌1頭です。
最大の課題は兄弟の黒い雄とベージュの雌がペアーになるかどうかです。

しっかりとした絆を持つペアーになれば

兄弟の黒い雌はベージュの雌の下の位となり
発情は抑制されて兄姉婚は起きません。
これがただ単に多頭飼育ではなく
オオカミとしての社会性のある群れ(パック)としての飼育になります。
「オオカミらしい生活」の出発点です。

ベージュの雌はある動物園に4年前に輸入されてきたのですが虚弱で
他の個体と一緒に生活することが困難でした。
他の個体からの攻撃を受け左前肢の指の欠損,機能障害が残りました。
大森山動物園に行ってからも特定の個体とは同居できたのですが,
群れに入ることはできませんでした。

「なぜそんな個体をあえて選んだの?」

それはオオカミの繁殖能力の強さに原因があります。
ある動物園でオオカミが繁殖すると

その子供は別の動物園にもらわれていきます。
毎年数頭の子が生まれますから,

その繁殖ペアーの血統が動物園界に広がります。
子供たちがもらわれた先で

血縁のない個体と新たなペアーを組み繁殖しても,
やはり孫同士は血縁があり,

近親交配を避けることができなくなってきます。

旭山で,黒い雄とベージュの雌がペアーとなってくれたら,
日本には血縁のない新たな血統が生まれます。
飼育下で繁殖を維持し,種を維持するのは実は大変なことです。
旭山で飼育するのは一般的にシンリンオオカミと言われている種です。
国内で血縁のない3系統のペアーがいます。
うまくいけば3代目までは種を維持できます。
一般的に動物の輸入は困難になりつつあります。
どのような種でも

国内で「うちだけ」でしか飼育していない種の未来の展望は明るくありません。

旭山の施設もオオカミもこれからです。
オオカミの表情(ゲンちゃん画伯)

2008年4月29日火曜日

鳥インフルエンザpartⅡ (平成20年4月番外編)

十和田湖のオオハクチョウ3羽の死体と衰弱個体(後日死亡)の内3羽から
高病原性鳥インフルエンザが見つかりました。
オオハクチョウは渡り鳥です。
冬になると越冬のために日本に渡ってきて、
春になるとユーラシア大陸の高緯度地方に戻り繁殖をします。
十和田湖のオオハクチョウは北海道を経由して繁殖地に渡っていきます。
東北地方や北海道ではもうしばらく警戒が必要です。

高病原性鳥インフルエンザについては

発生すると養鶏農家などの経済的な被害も莫大ですが、
このインフルエンザウイルスが
ヒトからヒトに感染するウイルスに変異する可能性が高いことが指摘されており
このことがもっとも恐れられています。
(ゲンちゃん日記:平成16年5月鳥インフルエンザ参照)

オオハクチョウから高病原性鳥インフルエンザが検出されたことを受けて、

環境省は「弱った野鳥にむやみに近づいたり素手で触ったりしないように」
と呼びかけています。
僕はもっと根本的なことで、ヒトとの接点を作る「エサやりはしないように」を
啓発するべきだと思います。
エサやりは野生動物の生活に干渉することです。

実際ハクチョウ類のパンやりなどの餌付けは、

本来ならば羽を休めるだけの場所で越冬する個体が出たり、
そのことでハクチョウ類の糞で湖が汚染されてしまったりと
様々な影響が指摘されはじめています。

人にとって「可愛らしい」と感じられるから、
「自然を、ハクチョウを愛している」といってエサを与える、
とてもわがままな行為につながっていると思います。

可愛くなくなったらどうなるのでしょう?

餌付けに依存してしまったハクチョウは
どうやって生きていけばいいのでしょう?
話が少々脱線しましたが、
高病原性鳥インフルエンザはニワトリ、アヒルなどの家禽との
濃密な接触をすることで人への感染が起きるのですから、
野鳥の場合、本来の関係であれば
家禽とのような濃密な接点は生じ得ないわけで、
要は「不自然な関わり方はしないように」
ということではないでしょうか。

愛すればこそ干渉をしない、野生動物との共生のキーワードです。

餌付けハクチョウ(ゲンちゃん画伯)

2008年4月26日土曜日

平成20年度年頭に (平成20年4月)

超特急で平成19年度が終わり,新たな年度が始まりました。

僕は密かにゴマフアザラシが出産するのではないかと期待しているのですが,
どうなったでしょうか?
ホッキョクグマはめでたく発情,交尾をしたでしょうか?
(3月19日に原稿を書いているので…)

恒例の春の開園準備作業も,ずいぶんと期間が短くなりました。
今年は18日間しかありません。
旭山動物園は定休日がないので,
春と秋の休園期間が唯一の充電期間であり,
新たな取り組みの準備期間なのです。

それにしても今年は短い!
映画やドラマのロケなどの対応も盛りだくさんだし,
外の社会と隔離された自分たちのためだけの動物園に浸りながら,
さまざまなアイデアを考え,具体化し,動物たちの反応を確かめ,
夏期開園が始まってからの来園者の反応を想像しながら
額に汗しながらノコギリを引く。
そんな余裕がありません。
ちょっとピンチです。
自分たちが楽しく仕事をしなければ,
来園者も楽しく過ごせるはずもありません。

今年度は旭山動物園の新たな時代の幕開けです。
遊園地がすべてなくなり,「動物だけ」で勝負することになるからです。
遊具も大きな楽しみのひとつだった子供たちに,
動物を通してより大きな喜びを伝えることがどのようにすればできるのか?
ただでさえ大人の入園者の比率が高い旭山で(収入面ではいいのだけれど)
これ以上子供たちが来なくなっては大変です。
子供たちが動物ではなく,
大人のおしりしか見れないような現状の中で
工夫をしなければいけないと思っています。

今まであきらめていたことも,
本当にできないのか検証もしてみたいと思います。
例えば動物園での「写生会」。ここ数年は見なくなりました。
というか,できる状況ではなくなりました。
というか,来園者が許してくれなくなりました。
クラスまとまってのお弁当。これも場所がなくなり,
みんながバラバラで獣舎の陰や歩道の隅で食べたりしていました。
これに関しては,遊園地の跡地に巨大な芝生広場ができて,
夏期開園から利用できます。
できることなら,ある程度は場所取りも認めてあげられないか検討します。

走り続ける中で,たくさんの落とし物をしているのでしょう。
どこかで振り返り探さなければいけません。
今がその時期なのだと思います。
それにしても一週間7日は短すぎます。
せめて9日あれば走りながら落とし物も捜せるのですが…

愚痴りながらも,今年もしっかりと結果を残しますよ,期待して下さい。