2011年8月31日水曜日

たくましく! (平成23年8月)

今年も気づけば夏も終わりです。
月日の経つのは相変わらず早いものです。
オオカミの子は順調に成長し、数日出張で見ないと、
大きく逞しくなっていて驚きます。

ヒグマの子の成長のゆっくりさと対照的です。
動物の子育て、成長を見守っていると、その動物のおかれている環境や、
さまざまな種類の動物たちとの関係が想像できます。

オオカミは強い肉食動物、そう感じている方が多いかも知れません。
無事に大人になりパックという群れを形成したオオカミは強いのですが、
群れを持てる個体はそう多くはありません。
多産な種はたくさん死ぬから多産なのです。
オオカミの暮らしは決して王様のような暮らしではないのですね。

オオカミの子の話に戻ります。
やんちゃにとっくみあいをしたり、追いかけっこをしたり、
食べ物の奪い合いをしたり、親に甘えたり、見ていて微笑ましく思います。
でも時にはいじめられているように見える時もあり、
仲間はずれにされているように見える時もあり、
お腹を見せて謝っている時もあります。

成長の過程の中で、さまざまなことを学び、
自分の能力を知り大人への階段を上っていきます。
肉体的に強い個体は他を思いやる心を身につけ、
弱い個体は和をとり、
支える気持ちを育てていきます。
強い個体が絶対ではなく、
さまざまな個性が調和を取りながら生きる術を身につけていきます。
子供の遊びは時に残酷に見える時もありますが、
大人の仲間入りをするための大事な勉強の時期でもあります。

動物たちの暮らしの中から、私たちヒトが忘れてしまったことや、
今一度考えて見直してみなければいけないことが
たくさんあるように思います。

最後に先月号の続きになるのですが、
震災以降めっきり姿を見なくなった外国の方が、戻り始めています。
なるほどガイドを始める数分前から
オランウータンにエサを与えながら開始を待ちますが、
アジア系の方々が最前列を埋めてしまう時があります。
 
ガイドが始まり日本語で話し始めると、
一斉にいなくなりぽかんと穴が空いた状態になってしまいます。
自分の語学力があればと痛切に感じてしまう瞬間です。

せめて紙芝居のように
数カ国語に対応できるようなことも考えなきゃと思いつつ
何もしないまま日が流れるように過ぎているこの頃です。

2011年7月31日日曜日

気づき (平成23年7月)

やっと夏が来るぞって気候になってきましたね!
旭川もなんだかワクワクする街になって行けばいいなと思います。
動物園にも市民や近郊の人の足が戻ってきて
動物園の原点を改めて考えたりしています。

そんな中、昨年から取り組んでいる「なるほどガイド」。
「もぐもぐタイム」とは視点を変えて、
日頃職員が考えていることや取り組んでいることをお話しするものです。

ただ知名度が今ひとつで
苦戦(予定時刻にお客さんがいない)することが多いのも事実です…。
継続は力なりです。めげずに頑張っていこう!と励まし合っています。

そんな中自分も時間が許せばオランウータンの前で頑張ってます。
雨の日も風の日も…。
けっこう頻繁にオランウータンたちに会うことになるのですが、
機嫌のいい日もあれば、
なにが気にくわないのかいらついている日もあります。

通り過ぎるように姿だけを見ていると変化がないように見えますが、
彼らにも日常の喜怒哀楽があるのだなと感じます。
ジャックとリアン・モリト母子は別々に生活をしていています。
一日おきに午後は屋外放飼場で暮らしているので、
一日おきにジャックと関わりながらガイドをしています。

オランウータンは考えてから行動する動物です。
室内展示場を造った時にも、
ジャックならきっと気づくだろうなと心配していたところは
ことごとく気づかれ破壊されました。
また気が遠くなる程観察し続け、
考え続けるとんでもない能力を秘めています。

屋外放飼場で空中散歩をすると、
ヒトは一斉にぽかんと口を開け見上げ、
自分を見つめる不思議な生き物。
高いところから手を叩くと、
地面にいるヒトは一斉に自分のまねをするように手を叩く…
ジャックは彼なりにヒトの習性を見破っています。

僕もジャックの習性を観察しています。
ちょっとしたエサを与えながら、
彼らの故郷の現状の話をするのですが、
話に夢中になりエサを与える間隔が長くなると
イライラしてチューチューと口を鳴らすのですが、
エサをくれではなく自己ピーアールをする時があることに気がつきました。

僕に視線が集中することがおもしろくないかのように、
自分の頭を叩きフランジ(ほっぺのヒダ)をプルンプルンと揺すります。
話を聞いていた人たちの目線はジャックに釘付けです。
笑い声が響きます。
いらついている時とは明らかに異なる音を発したりもします。
悔しいですが僕の負けです。

さらに僕は気がつきました。
このような行動をするのは
決まって若い女の子(ヒト)がたくさんいる時なのです。
無邪気な甲高い笑い声、確かに僕も心地いいのですが…
ジャック恐るべし、の巻きでした。

2011年6月30日木曜日

目覚め (平成23年6月)

近年の中でもより早い雪解けだと思ったら、
4月下旬からいっこうに暖かくなりませんでしたね。
桜が5月中旬すぎてやっと満開なんて
記憶にないくらい遅かったのではないでしょうか。

虫や鳥たちのリズムにも影響があるようです。
園内では在来植物の定着、展示にも力を入れているのですが、
5月中旬すぎにヒメギフチョウが飛んでいました。
ヒメギフチョウの幼虫はオクエゾサイシンという植物を食べるのですが、
チョウの羽化、植物の成長、
産卵すべてが連動して遅い春となったようです。
さまざまな営みがちゃんと修正され
帳尻が合う程度ならばいいのですが、
最近の気候は乱暴になってきているのでちょっと心配です。

さて、ヒグマの子はスクスクと成長しています。
自由に転げ回って遊ぶ子供たちと、
それをしっかりと見守る母親の姿が印象的です。
春の山菜取りや釣りのシーズンになると
親子のクマには特に注意!と言われますが、
母グマの子グマに対する愛情や安全に対する気配りを見ていると
当たり前だとつくづく思います。
クマを危険な動物にしてしまうのは
ヒトのわがままな行動が原因なことが多いのだと改めて理解できます。

母親の「とんこ」は1999年4月30日に母親を駆除されて
当園に持ち込まれました。
当時まだ体重数キロの子グマでした。
「とんこ」が母親になり子育てをする姿が、
「とんこ」と「とんこ」の母親と同じ運命をたどるヒグマを
少しでも減らすことにつながってくれればと祈らずにはいられません。

シンリンオオカミも繁殖しました。
メスが巣穴にこもる時間が長くなり
「もう近い」のではと見守っていたところ、
5月6日オスの「ケン」の態度が明らかに変わりました。
いつもは寝室に入りエサを食べてから放飼場に出るのに
その日はエサを口にくわえ
放飼場に戻り巣穴にいるメスの「マース」に運んだのです。

以降「ケン」は頻繁にエサを埋めて隠し掘り出しては
「マース」に運ぶようになりました。
「マース」が「ケン」の口元を舐め
エサをねだる行動も見られるようになりました。
子が生まれ母性が目覚めるように、
「ケン」も父性が目覚めたのですね。
オスメスそれぞれがそれぞれの役割を果たしながら
子育てが続いています。
子が巣穴から姿を現す日が楽しみです
※5月24日から子が巣穴から出ている様子が見られています)。

オオカミの森が「ケン」と「マース」の営みの場になりました。
たくましく成長する子の姿を見守っていきたいです。
シンリンオオカミの「ケン」と子ども