2013年3月31日日曜日

エゾシカの治夫 (平成25年3月)

エゾシカの治夫が死亡しました。
1994年の春に赤ちゃんで保護された個体でした。
当時は山菜採りで森に入った人が子ジカが一頭でうずくまっていたから
かわいそうに思い誤認保護するケースが年に数件ありました。
エゾシカは森の中でひっそりと暮らしているんだなと
珍しかったことを思い出します。

保護されたエゾシカは隔離室でお皿に入れたミルクを飲むように餌付け、
数日したらうらの草地や園内に散歩に連れ出し
さらに数日したら昔のエゾシカ舎に連れて行き
仲間入りの訓練をしました。

エゾシカは特にメスはよそ者を受け入れたがりません。
日中保護個体を同居させておくのですが、
追い払われて居場所をなくし柵の隙間から逃げ出し、
夜過ごす隔離室の前にいるということが続きます。
気長に繰り返すことで保護個体もエゾシカといる方が落ち着くようになり、
メスたちも受け入れるようになります。治夫もそんな保護個体でした。

治夫は成長し、たくさんの子を残し、新しいエゾシカ舎では堂々とした風貌で
たくさんの来園者を魅了しました。
数年前から角の枝分かれが正常ではなくなり、一昨年の秋の繁殖期には、
立派に成長した息子に遠慮するようになり
今シーズンは体力の衰えが顕著になっていました。
死因は老衰で見事に生を全うしたと思います。

治夫が生まれてから19年でエゾシカ史は大きく変わりました。
理由はどうであれ、町中に現れたエゾシカは保護し山に放し、
山の中では年間10万頭以上のエゾシカが無差別に駆除されています。

エゾシカほど北海道の四季折々の豊かさと厳しさを実感させてくれる動物は
いないのではないかとつくずく感じます。
体毛の色、角、鳴き声、群れすべてです。
エゾシカ舎のあべ弘士さんの絵が見事にそのことを現しています。
素晴らしいエゾシカとどのように共に暮らしていくのかが
見えなくなってしまいました。

治夫が保護された頃は、
エゾシカってこんなにつぶらな瞳なの、可愛らしいだけでもよくて、
まさか実はエゾシカが増えすぎてこのままでは農作物の被害だけでなく
自然そのものまで破壊してしまう存在です
なんて話をしなければいけなくなるなんて考えてもいませんでした。

ふと治夫のことを書いてみたくなりました。

2013年2月28日木曜日

雪明かりの動物園 (平成25年2月)

新年を迎え、昨年末から始まった雪と寒さとの闘いが続いています。
それにしても3日の吹雪には参りましたね。
出勤できた職員が力を合わせ最低限の雪かきを終え開園できました。

来園者は来るのだろうか?どうやってくるのだろうかと思っていたのですが、
この日1000人以上の来園者がありました。
その多くが観光客で、さすが旭川雪が多いですね!綺麗ですね!
とあっさりと言われて複雑な思いでした。
気候変動はこれからも続くのでしょう。
それにしても天気予報で雪マークがあると
札幌にさえ行くのがためらわれますね。
逆もまた同じなんでしょう。

さて、現在大きなイベントの準備に追われています。
もう雪はうんざりだねと言っていた昨年の末に、
職員の中から雪があるから心が温まることができないかなと
雪明かりの動物園との発想が生まれました。
どうせやるなら外に出る動機が強くなる冬まつり期間中にしよう!
とあれよあれよでやることに決めました。

夜7時まで開園、アイスキャンドル数百個に明かりをともし、
静かな冬、雪明かりの中で見る動物たち、ワクワクします。
が当然このための予算はないので大変です。
飼育も管理もなく全員でキャンドルの製作、
お客さんの対応をしようと盛り上がっているのですが
果たして行ってよかった!になったでしょうか。
やることが結果ではなく、
結果をとらえてさまざまなことに繋げていくことが
重要なのだと考えています。

秋にオープンした北海道産動物舎、
先日の朝オオワシが気持ちよさそうに水浴びをしていました。
気温は優にマイナス10度を下回っているのに…
外来種であるアメリカミンクの展示も施設利用の許可が出たので始めました。
飼育展示を予定していたアメリカミンクとアライグマは特定外来種と言って
飼育することに関して施設と共に許可を得なければいけないのです。

ミンクもアライグマもその動物だけを見ると素晴らしい生き物ですが、
北海道に定着し野生化することがどうして問題になるのか?
そのことに気付いてもらえる展示を目指します。

春になれば小型のフクロウ類や小鳥などの展示も始まります。
冬を楽しもうと言っておきながらなんですが、春が来るのが楽しみです。

2013年1月31日木曜日

新年のごあいさつ (平成25年1月)

みなさんあけましておめでとうございます。
年末の雨、年始の大雪と明らかに気候は荒々しくなっています。
エゾシカたちはどうしているのでしょう?ふと気になりました。

明治時代に日中雨が降り夜になって雨が雪に変わり寒波が入ってきて、
エゾシカが大量に死亡したとの記録があります。
濡れた毛が凍り防寒機能が働かなかったためです。
でも今回は動物園で飼育しているエゾシカでさえケロッとしていたので、
そんなことは起こらないのでしょうね。
今年度の北海道での人為的なエゾシカ捕獲駆除目標数は15万頭、
ただの殺戮よりも自然現象の中で
あるがままに調整される方がいいのは明らかでしょう。

今年は巳年ですね。身近にもヘビはいます。
当然園内にもいます。
でも驚くほど多くの人が身近にはヘビがいないと思っています。
昔、警察所から市内の住宅街でヘビがでて
捕獲したので保護して欲しいと依頼がありました。
床掃除用のぞうきんを挟むモップでヘビの首を挟み持ってきました。
アオダイショウでした。
ヘビは昆虫やカエルやネズミ類を食べる肉食動物です。
ヘビがいると言うことは
生き物たちの豊かな営みがそこにはあると言うことです。
そんな豊かさを感じるアンテナが
僕たちの暮らし方の中から消えつつあるように感じます。
動物園は、命を大切にイコール助けること、殺さないことではなく
全体の調和や全体の仕組みを感じる
心を育てる場でありたいと思っています。

ヘビとトカゲ、脚のないトカゲがヘビ、
でも脚のないトカゲもいる…ヘビとトカゲはどこが違うの?
ちょっと調べてみてはいかがでしょうか

ちなみに僕の今年の目標は、
ヘビのように揺るがない信念を貫くこと、です。
すべての生き物によい一年でありますように。
今年の干支ヘビ(ゲンちゃん画伯)