2000年5月10日水曜日

密輸(平成12年春)

今やペットといえば犬や猫だけじゃなくて,
プレーリードックやミーアキャット,
リスザルにホシガメなどの爬虫類,
タランチュラまで売っている時代です。
ライオンだって買えちゃう時代です。
もちろんライオンや大きなニシキヘビなんかは危険動物なので,
それなりの基準を満たした施設でなければ
飼育してはいけないという条例もあります。

でも,時代は飼えるものならば何でもありです。
たとえ飼育が難しくても,長生きさせることがほとんど不可能でも,
危険がなければ「買う人がいれば売ってしまえ」なのです。
ペットショップで名前すら分からずに売っている爬虫類をよく見かけます。
どれだけ多くの命が興味本位の人たちによって失われているのでしょうか。
特に,珍しい爬虫類などはほとんど消耗品のように扱われています。

では,高価で珍しい動物はどこから来るのでしょう?
飼育すら難しいのですから繁殖はもっと難しいはずですよね。
そう,野生のものを捕獲しているのです。

環境破壊によってではなく,
捕獲によって絶滅の危険が生まれているのです。
そこで地球規模で野生動物を保護しようと
国際間での野生動物の取引を規制する
「ワシントン条約」が出来ました。
これは絶滅の危険度によって細かく分類されています。
実は,日本は野生動物の保護の面では,
行政も国民も意識がとても低いので,とても大きなマーケットなのです。

カメの中で一番人気のあるホシガメは
「ワシントン条約」の2表に分類される動物で,
輸出国の許可があれば輸入は自由です。
そして国内での取引も自由です。
でも,野生個体を大量に捕獲して
輸出国の政府が許可を出すわけがありません。
でも輸出国の許可証がなくても,日本の税関さえくぐり抜ければ,
あとはなんの制約もありません。
そこで「密輸」がおこります。
現地で数百円で買って日本でン万円で売れるのです。
見つかっても税関で所有権を放棄すればいいだけです。
これでいいのかなと思います。

税関で摘発され保護された動物は,どうなるのでしょう?
これも変な話,行き先がありません。
もちろん売買は出来ません。
そこで動物園や水族館に緊急保護という形で収容されるのです。
当園でもホシガメ30匹とシロテテナガザル1頭を
この緊急保護個体として飼育しています。

爬虫類は1回で数百匹単位の緊急保護が生じます。
日本中の動物園・水族館が協力しても収容しきれなくなってきています。
本当にお金で買えるものは何でも飼っていいのでしょうか?
ペットショップで売っているホシガメ,
本当に合法的に輸入されてきたものなのでしょうか?
日常の生活の中で知らず知らずのうちに,
想像もしない場所に深刻な影響を及ぼしていることは,
意外と多いのかもしれませんね。

ホシガメ
画:ゲンちゃん