2008年3月31日月曜日

温暖化の中での生き残り戦術(平成20年3月)

久しぶりに寒い冬らしい冬だなと思っていたら,
2月の中旬に入りとたんに暖かくなってしまいました。
あざらし館スタッフが懸命に具体化した念願の流氷広場も

あっけなく溶けてしまいました。
なんか地軸の傾きがおかしくなったのかと思うくらい強い日差しです。
今年も結局雪解けは早そうな予感です。
オホーツク沿岸のゴマフアザラシたちは

無事に出産,子育てができるのでしょうか?
流氷は彼らのゆりかごです。
ほんの数週間早くなくなることで,

アザラシは命をつなぐことができなくなります。

今年は「温暖化」という文字を洞爺湖サミットもあることだし
イヤと言うくらい目にする年になるでしょう。
でも今よりももっと暖かい時代は過去にあったわけで

温暖化自体が問題なのではありません。
問題は温暖化のペースが異常に早いこと,

温暖化がおそらく人為的だということです。
動物は自らに与えられた環境の中で命を育みます。

自らが環境を変え臨機応変に生きるという生き方をしません。
数世代のうちに激変して環境そのものが変わってしまう中では

生きることができません。
変え続けることでここまで来た人類でさえ

農業などごく近い将来大変なことになるでしょう。

ただ,動物たちにもしたたかさはあります。
ホッキョクグマはすでに温暖化の影響を強く受けています。
近い将来,もしかしたら僕が生きているうちに絶滅するかも知れません。
そんな中でハイブリッド個体いわゆる雑種が確認されています。
ホッキョクグマとヒグマの雑種です。

数年前ヨーロッパの動物園に
茶ブチのホッキョクグマがいるらしいとの情報は知っていたのですが…
まさか野生下でしかもごく希ではなくいるらしいのです。
温暖化は,極地よりも少し暖かい環境に棲むヒグマにとっては
生息地が極地方面に拡大することを意味します。

本来ならば生活の仕方が全く異なり

棲み分けていた彼らに接点ができたのです。
ホッキョクグマとヒグマは

わずか20万年程前に種として分かれたとても近い親類関係です。
ハイブリッド個体は

両種の特徴を持ち合わせる新たな可能性を持った個体です。
ホッキョクグマは自分がホッキョクグマという種だと自覚し

生きているわけではありません。
激変する環境の中で命をつないでいるだけです。

雑種化は,純粋なホッキョクグマを

驚く程の早さで絶滅させる可能性があります。
きっと純粋なホッキョクグマを保全しなければといった

人間の価値基準での議論がなされるでしょう。
復元不可能な環境破壊をして

種を存続させることはコレクションでしかありません。 

そんな中,イワンが繁殖可能年齢になります。
2世誕生に期待がかかります。
ただのコレクションにしてはいけません。
ホッキョクグマ?それともヒグマ??(ゲンちゃん画伯)