2006年3月28日火曜日

ビーの引退 (平成18年3月)

「こども牧場」の看板を背負って頑張ってきた
ビーグル犬のビーが2月19日を持って引退しました。
今年で14才。
元気はあるのですが,数年前から患っている椎間板ヘルニアに起因すると考えられる
腰痛の発作が数回あり,今年に入ってからは両後肢がほとんど麻痺してしまうほどの
大きな発作を起こしました。
内科療法で順調に回復しているのですが,
もう,自由に外を走り回らせたり,たくさんの人にふれあったりは出来ないと判断しました。
視覚,聴覚の衰えに加え,イヌ同士レトリバーのチャンティとの関係も微妙で,
体格が大きく,やんちゃでやきもち焼きのチャンティに常に気を遣い,
「気づかれ」の負担も大きくなってきていました。

思い起こせば平成7年の春に資材置き場になっていた小屋を改造し,
道内の動物園などの好意で譲り受けたカイウサギやモルモット,ヤギにヒツジを飼育し
「ふれあい牧場」を始めました。
「施設は古いし,ふれあえる動物もいないの!」そんな言葉をずっと耳にしていたからです。
20年近く前から幼稚園児等を対象としたガイドは行っていたのですが,
「生きていること」を感じてもらうには「ふれあう」ことがとても大切です。
ガイド用に,越冬舎や入院室でウサギやニワトリ,クサガメなどを数匹ずつ飼育して
対応していました。
ふれあうことから始まること,温もり,肌触り,
自分の思い通りにはならない感情のぶつかり合いなど,
言葉では得られないことがたくさんあります。
子供たちの表情を見ていると動物園は「命を伝える」場なのだと強く感じていました。

平成9年度,新しい「こども牧場」が出来ることになりました。
当時,好意で譲り受けたのがビーでした。
それまで室内犬として飼われており,動物園の環境に慣れるまでは大変でした。
たまに担当者が家に連れて帰ると,反動なのかわがまま放題になり甘えていました。
来園者が年間数十万人だった数年前までは,結構のんびりと過ごす時間もあり,
土曜・日曜くらいが「ビーも今日は頑張って仕事したね」でした。
しかし,ここ数年は毎日が祭日のようになり,
ビーはひたすら「耐える」あるいは「無関心を装う」ようになりました。
来園者から「こんなにたくさんの人の中,ちょっと可哀相なのでは」
とのご指摘も受けるようになりました。

「こども牧場」は旭山動物園再生の原点,ビーは看板犬でした。
一度も来園者に対し,うなったり,噛みついたりといった事故もなく,
休日もなく頑張ってくれました。
月日の経つのも忘れる日々が続いていますが,
いつの間にかビーはおばあちゃんになっていました。
ゆっくりと休ませてあげたいと思います。