2006年7月28日金曜日

個性 (平成18年7月)

動物には種としての習性,性質とさらに個性があります。
昨年の秋に生まれたカピバラの仔の一頭が親に育てられたにもかかわらず,
ヒトに対して警戒心がないのです。
むしろ,積極的にヒトのそばに来てひざの上にまで登ってきます。
「おまえは野性では生きていけないね」と思います。
でも,野生下でもきっと個性は大切だと思います。
もしも環境の変化が起きた時,警戒心のなさが新天地での適応能力になるかも知れません。

ライオンの仔が4頭生まれた時がありました。
あろう事か全部雄でした。
外見からは見分けられなくても,性格で見分けることができます。
2頭はとても気が強く,檻越しに覗くと一丁前にこちらに牙をむいてきます。
1頭は2頭の陰からこちらの様子をうかがっています。
最後の1頭は母親の後に隠れてしまいます。

ライオンの雄の子は生長すると群れ(プライド)を追い出されます。
子別れです。
気の合う数頭が行動を共にして,他のプライドの雄を追い出し自分のプライドを持ちます。
気が強い2頭はきっと自分のプライドを持てるでしょう。
でも気の弱い2頭は,自分の居場所を生まれ故郷では確保できず新天地に出て行くでしょう。

強い個体は,もしも環境が変わっても執拗に自分が獲得した縄張りに固執し,
少なくなった獲物を誰にも渡すまいとするでしょう。
その結果,死を迎えるかもしれません。
新天地にさまよった2頭が無事に生きていたら,
その2頭がライオンという命を受け継いでいくことになります。
気の弱さが情けなく見えるのはある基準から見てであって,
環境が変わったり,違う基準で見ると長所にもなります。

運動会シーズンが終わりました。
大きな都市などで,徒競走など順位が着く種目をやめたところがあると聞きます。
「順位は優劣をつけることになる」はたしてそうでしょうか?

勉強でも科目によって得意不得意はあります。
身体能力も含めてすべて個性なのではないかと思います。
個性の目を潰してしまっているのではないでしょうか。
一位には一位の価値が,同じように六位には六位の価値がきっとあると思います。
大事なのは親や先生が結果をどのように受け止めるのかではないでしょうか。
将来の受験や,社会に出てから競争はあります。
その場だけを丸く収めるような方法が僕にはいいとは思えないのですが…