2009年1月30日金曜日

新たな一歩 (平成21年1月)

明けましておめでとうございます。
前号で順調に冬が訪れていると書きましたが,
そうではなかったですね。
12月17日現在,ペンギンの散歩は
いつ始められるのか全く見当がつかない状況です。
長期的に見てどうか分かりませんが,
ここ数年はやはり気候変動は明らかですね
(12月28日から実施できました)。

今年は丑年です。
早いもので僕は年男です。
動物園にはウシはいませんが,
一歩一歩惑わされることなく
マイペースでやっていきたいなと思っています。

今年は映画「旭山動物園物語ペンギンが空を飛ぶ」が放映されますね。
皆さんは見に行かれるでしょうか?
過去の歴史が凝縮され,
少数の役者さんが数人分づつを演じておられるのですが,
こんなこともあった,あんなこともあったと思い出されることが多く,
感慨深いものがありました。

客観的には旭山動物園は「成功」しているので
映画も成功物語なのですが,
見終わって改めて「これからが勝負なんだ」と強く感じました。
今年度は入園者数が前年度より減少します。
右肩上がりの時代ではなくなります。
成功=来園者数が方程式の中,
来園者数ではない成功を目指していかなければいけません。

来園者数が少なくなることで,
僕たちスタッフが伝えたいことをより多く伝えられるようになり,
来園者の満足度を高め,こどもたちに希望や夢や,
未来につながる新しい価値観が芽生え,
真の意味での動物たちとの共生が見えてくる場になるように
努力を惜しんではいけないのです。 

何より動物園が,集客施設というだけの位置づけではなく,
動物園が動物に関わる社会貢献活動に積極的に参画し,
動物を飼育している責任を
明確に果たしていかなければいけないと思っています。
来園者数に左右されない社会的な地位を構築しなければ,
動物園はただの動物コレクションの場で,
旭山動物園もいつかブームで終わってしまいます。

そういえば,キングペンギンのメスが1羽新たに仲間入りしました。
男鹿水族館からのブリーディングローンです。
旭山には11羽の成鳥のキングペンギンがいますが
メスは2羽だけでした。
2羽のメスにとってオスは「よりどりみどり」なはずなのに,
両方とも1羽のオスに思いを寄せていたり,
オス同士のペアーができたり,何かと悩みはつきませんでした。
新しく仲間入りしこのメスがはたして誰とペアーになるのか?
(まさかメスの三つ巴?)
今から春になるのが楽しみです。
この手紙が届く頃には「散歩」にも参加しているかも知れません
(参加しています)。

皆さんにとって,良い年でありますように。
動物たちにとっても明るい未来が見える年でありますように。
キングペンギンの散歩(ゲンチャン画伯)

2009年1月7日水曜日

動物の行動解説 (平成21年1月特別号)

さて、新たな年を迎えたことだし、
何かしたいな~と思い立ったのがゲンちゃん日記特別号です。
動物たちの特徴的な行動などを映像を交えて紹介しようと思います。

第一回は、レッサーパンダです。
正月の誰もいない閉園期間だから撮れた映像を紹介します。

その映像をまずご覧ください。動画はこちら

レッサーパンダは飼育していて、抜群におっとりとした動物です。
ジェンツーペンギンにつうじるものがあり、
警戒心よりも好奇心の方が勝ってしまう習性があります。
これは野生の生息地での捕食圧が低いこと、
あるいは安全な生活圏を持っていることを反映しています。
飼育下生まれでも特別な調教などを行わない限り、
本来の習性は失われることはありません。

ただし、いざとなれば当然威嚇や攻撃をします。
レッサーパンダの武器はとても鋭い爪とまぁまぁ強力な歯です。
この動画の行動はレッサーパンダ得意の威嚇行動です。
レッサーパンダ同士でもじゃれながらよくやっています。
他にもネコのように半身になって毛を逆立てるパターンもあります。
凌凌(リンリン)はモートに降りる常習犯です。
モートに降りるとイヤな思いをすることを学習させようと、
凌凌(リンリン)を威嚇してみました。
ところが凌凌(リンリン)もやるもので僕に挑みかかってきました。
ネコパンチならぬレッサーパンチです。
僕の威嚇攻撃は彼には効かなかったようです。
それにしても不思議なヤツですネ。

 関連リンク:好奇心(平成20年1月)
レッサーパンダ(ゲンちゃん画伯)

2009年1月3日土曜日

新年のごあいさつ (平成21年1月3日)

みなさま あけましておめでとうございます。
今年は何が起こるのかわからない、見通しのきかない年になりそうですね。
どっちかと言えば暗い年になりそうですが、
いろんな意味で、これからの未来に向かった
新たな価値観や仕組みの構築が始まる年になるのでしょう。
まぁ考え方を変えれば激動のまっただ中を体験できるし、
自分たちが主役にもなれる可能性があるともいえるでしょう。
 
今の社会は明らかに「個」の時代です。
個の権利がとても強く主張され、僕には「これでいいの?」
と思えることが多くあります。
個はとても大切ですが、全体があって初めて個として存在できます。
全体があること、つまり社会や国があることの意味を
今一度しっかりと考えないといけない気がします。
ヒトは飛び抜けたコミュニケーション能力を持ち、
異常ともいえる密度で生活をする仕組みを作り上げてきました。
 
僕は東京など都会に出張に行くと違和感を感じることがあります。
山手線に乗ると(これしか乗れない(^_^;))隣や向いの人が
あたかも周りに誰もいないかのように振る舞っています。
携帯やゲーム機をいじっている人、化粧をなおしている人、
本を読んでいる人…
自分一人の部屋にいるかのような表情をしています。
目があっても人を見ている目ではなく
ポスターか何かを見ているように感じます。
確かにあの雑踏の中にいると人として意識していては
とてもじゃないけどやっていけない気はします
(田舎ものの僕は人人人…に見えるので
都会への出張は精神的にとても疲れる)。

関わりを持たないこと、いやなところは見ない、
都合のいいところだけ関わることで
集団生活が維持される方向にあるようです。
もはや社会ではなく集団です。
 
動物園も当然、時代や社会を反映する一面を持っています。
各地の動物園で個体のスターが誕生しているのも
時代を反映しているといえるでしょう。
一方で地球規模での気候変動や環境破壊などの問題解決が
急務となっていて、生物多様性、保全といった言葉を
頻繁に耳にするようになりました。

この言葉の意味するところは、もはや個体を保護、愛護する視点では
問題を解決できない段階に来ていて、
全体の仕組みそのものを守っていかなければいけないという視点に立った
方向性を示しています。
擬人的な興味から生まれた個体のスターから野生動物、環境の保全、
共生の感覚は非常に生まれにくいのではないかと思います。

旭山動物園は、それぞれの動物らしい命の営みを
淡々と伝え続けていきたいと思います。
その理念をとおして、
動物園が存在するからこそできることを具体的な形にしていく
スタートの年にしたいと考えています。

今年もみなさまにとってよい年でありますように。
09新年(ゲンちゃん画伯)