2007年9月26日水曜日

へその緒(平成19年9月)

お盆が過ぎたというのに蒸し暑い日が続きます。
日本やヨーロッパでの猛暑,
北極の氷が予測をはるかに上回るペースで溶けている等々,
将来が不安になるイヤなニュースが続いています。
それにしても氷が溶けた場合の領海権や
海底資源の権利の問題が取りざたされていて,
ヒトという生き物の底なしの貪欲さを見たような気がします。
ホッキョクグマを守ること=温暖化のペースを遅らせる努力よりも
「欲」が勝るような予感がするのは僕だけでしょうか。

そういえば,7月30日12時過ぎオランウータンのリアンが長男を出産しました。
そろそろかなと予測していたのですが,
室内展示場でお客さんの見ている前での出産でした。
「出産」の一報が無線で流れ,飼育係が集まりました。
ただならぬ雰囲気を察したリアンが落ち着きをなくしたので
その日はすぐに寝室に収容しました。
僕たちが駆けつけたのには理由があります。
リアンは長女のモモを出産した時に育児ができませんでした。
飼育担当者の介助で立派な母親になれたのです。
2回目は大丈夫か?一抹の不安を抱えていました。
 
するとリアンは長男をしっかりと抱え,モモをおぶり,
僕たちを見る目は母親の目でした。
モモの時の不安げな様子はみじんもありませんでした。
たくましい母性を見た気がしました。
寝室に収容し,様子を見ていると子の体をなめ,しっかりと胸に抱っこし,
仔は乳首に吸い付いています。
モモは興味津々でリアンの肩口から顔を覗かせ,
そっと弟の体を触ったりしています。
群れを作らないオランウータンは子育てなどすべてを母親から学びます。
モモは立派な母親になれるでしょう。
 
ただひとつ,リアンができなかったことがあります。
臍(へそ)の緒を切ることです。
オランウータンは臍(へそ)の緒が長く,
臍(へそ)の緒が仔の首に巻き付いて
窒息死した事故例が報告されています。
夕方になっても臍(へそ)の緒と胎盤はついたままです。
リアンの気をそらせている間に,
ハサミで臍(へそ)の緒を切ってやりました。
一安心です。
モモが生まれた時も臍(へそ)の緒は飼育係が切りました。
やはり今回も…。
臍(へそ)の緒は勝手に切れるもの,
リアンはそう思ってしまったのかも知れません。
モモが母親になった時も?…
先のことですが少し不安が残りました。
リアンと赤ちゃん(ゲンちゃん画伯)