2016年2月15日月曜日

冬の剥製室に起きる怪奇現象とは…

この原稿を書いている時点で18分の1年が過ぎてしまいました。
なんと月日の経つのは早いことか…
例年この時期は来年度の予算の折衝で頭を悩ませています。
動物園は職員の給料も含めて歳入と歳出をイコールになるように組まなければいけないので
なかなか大変なのです。

今年度はあまり見ることのなかったインドネシアやタイ、
マレーシアなどからの来園者が明らかに増え国際色がより豊かになったように感じます。
ペンギンの散歩でも聞き慣れない言語が飛び交います。
くるぶしまでの靴下にスニーカーなんて格好の人も多くいます。
暑い国が多いアジア圏の中で、
冬の北海道の魅力は計り知れないものがあると思います。
寒さと雪をどう感じてもらうのかをしっかりと見据えなければいけませんね。

そういえば冬になると毎年起きる怪現象があります。
それは資料展示館の剥製室です。
実は剥製が…鳥肌が立った人ごめんなさい。
そっち系の話はお盆のころにしましょう。実は剥製室にハエがわくのです。
ハエの成虫が飛んで入ってくるのではなく、
たぶん秋に侵入したハエが産んだ卵が孵化し、成長し、蛹になり、成虫になるのです。
日中はほんの少し暖房を炊いているので真冬に目覚めてしまうのかもしれません。
それにしても剥製しかないのです。
剥製は中身がなく皮は薬品処理をされています。
さらに夏場にかけて大量発生することがあるので、
剥製室ごと殺虫剤で燻煙してるのに、
そもそも水分なんてほとんどないはずなのに…凄いもんです。
昔肉がハエになると信じられていたことが分かるような気がします。
まずはハエも季節ごとに発生する種類が違うので、
ちゃんと調べなければ勝負になりませんね。

もう一つ剥製室のレイアウトは飼育スタッフでつくったのですが、
20数年前にこの枝振りがまさに最適と僕が切ってきた木があって、
その木にも何かが住んでいます。
毎年とても細かい木くずが至る所にたまっています。
恥ずかしながら未だに正体が分かりません。
命が死に、その死から毎年命が誕生し続けます。
管理不足を棚に上げ感動ばかりしているわけにはいきません。
今のところ剥製は維持できていますが、
このままではいつかダメになってしまいかねません。
来園者に見ていただく場所なので、薬剤など安易な方法だけではなく
相手を知り根本的な対策を講じなければと考えています。
まずはもととなるハエの侵入の確率を
限りなくゼロにすることから始めなければと目覚めた年の初めでした。 
                

2016年1月18日月曜日

さる山を改修して良い申年に (平成28年1月)

2016年申年の始まりです。
ヒトもサルだと言うことを謙虚にかみしめる一年にしたいと思います。
ヒトだけが他の生き物とは異なる次元にいるような錯覚の中で
未来を見ようとしているように感じてなりません。
数を数えられない動物たちが調和を保てて、
数を数える理屈をこねるヒトが調和を保てません。
よい一年になるといいですね。

旭山的には、とりあえず一年流れてしまったさる山リフォームを
今年こそ実現させよい申年にしたいと思います。
安全と食べることを保証した中で、
よりニホンザルらしい暮らしの実現をコンセプトに頑張ります。

この手紙を書いている時点でペンギンの散歩は始まっていません。
遅い年には年末ギリギリなんてこともあったのですが、
今年は雪が降っては溶け降っては溶けを繰り返しています。
常に残雪のような状態です。
中途半端でよくない状況が続いています。
動物舎の放飼場もグチャグチャガタガタになってしまいます。
特に初めての冬を迎えているキリンのユイには気を使います。
ベタ雪は体温も奪うし…。

そんな中年内最後の動物の引っ越しが無事に終わりました。
雌一羽になっていたダチョウ舎に
山口の秋吉台から雄が来園しペアーとなりました。
また総合動物舎で一羽での暮らしが続いていたエミューが
愛媛のとべ動物園に旅立ちました。
エミュー舎建て替えの余力、計画はなく、
本来は群れで生活する鳥なので
とべ動物園で元気に過ごすことを願っています。

でもエミューを最後にオーストラリアの生き物はいなくなってしまいました。
オーストラリアと言えば有袋類ですが、旭山にも有袋類がいたことを知っていますか?
僕が旭山に入ったころには、ウォンバット、ベネットアカクビワラビー、フクロギツネがいました。
動物園は短時間に気軽に地球一周ができる場所だと思っていますが、
オーストラリア大陸にはいけなくなってしまいました。
ちょっと残念ではあります。