2015年12月16日水曜日

雌のキリンの名前が決まりました (平成27年12月)

冬期の閉園期間もあっという間に終わり、
厳冬期までに終わらせたい修繕などのスケジュール調整に追われています。
来園者に迷惑をかけないように閉園時間の3時半からスタートできるのですが、
なんせ日暮れが早いし寒いので…業者さんも大変です。
無理難題ばかり押しつけているようで申し訳ありません。

新しく来た雌のキリンの名前は「結(ゆい)」に決まりました。
動物たちも人も皆が結ばれるようにとの理由で命名していただきました。
たくさんの名前の応募があったのですが、
あまり思い入れが強すぎると背負う物が大きくなりすぎるし、
軽いノリでは死んだマリモに申し訳ない気がして選考は長時間になりました。

名前を公募するたびに思うのですが、
たくさんの方がさまざまな思いを持ち動物を迎え入れているんだなと、
改めてしっかりとした飼育をしなければいけないなと気が引き締まります。

結とゲンキの同居は順調に進みました。
当初はゲンキもそれほどしつこくはなかったのですが、
日を追うごとに常に結の後ろを追うようになってきました。
ほんと食べる時以外は半径5メートル以内にいなければ気が済まない程です。
マリモの時はゲンキの方が子供で旭山に来たので仕方がないなとも思っていましたが、
まだ小さな結に対してもつきまとうとは困った物です。
ただゲンキも仲間がいなかった期間が長く喜びも大きいのかもしれません。
毎日マリモの尻尾を咥えてついて歩きマリモの尻尾が脱落したのですが、
さすがに結はまだ小さくゲンキが頭を下げても咥えることができません。
その癖だけは忘れていて欲しいと願っています。
結は初積雪にも落ち着いていて雪が滑ることも学び、
滑り歩きも自分の物にしています。
結が来た当初長雨で地面がぬかるみ
適度に滑り歩きをしていたこともよかったのかもしれません。

話は変わりますが旭山はどこを掘っても粘土地で水はけは最悪です。
キリンの放飼場はかなり地盤の入れ替えをしたのですが
長雨が続くと厳しい物があります。
閉園期間中にぬかるんだ表層を取り除き再整備しました。
でこぼこのまま凍結すると事故につながりかねません。

この手紙のころ雪は積もっているのでしょうか?
今年の冬は早いのかななんて思いつつキーボードをたたいています。
動物にも皆さんにもよい年で終わりよい年越しができることを願います。
今年も一年ありがとうございました。 


2015年11月18日水曜日

雌のキリンを寝室に入れるのに四苦八苦 (平成27年11月)

さてさて、あっという間に夕方5時も過ぎると暗くなります。毎年思うのですが、
10月に入ると急に日が短くなり始めるように感じます。
365分の1づつのペースではないような…

9月に続き10月も週末になるたびに天気が崩れます。
なんか滅入ってしまいますね。

10月には無事にキリンの雌、イボイノシシ、
そしてレッサーパンダの仔のお披露目ができました。
新しい命を迎え入れること、誕生することはやはり嬉しいものです。
個人的にはイボイノシシの成長が楽しみです。
上顎の犬歯がどのように伸びていくのか、どこまで大きくなるのか、
どんな行動が観られるのか…興味は尽きません。

新しく来たキリンの旭山の環境への順応はとても順調です。
アメリカから飛行機で日本に来て、
2週間の検疫を行い陸路旭山にやってきました。
輸送檻をクレーンで獣舎の扉と向かい合わせに置き、
両方の扉を開け寝室内にキリンを迎え入れます。
通常だと輸送檻の居心地はよくないので、
初めての環境に足を踏み出す怖さよりも、
輸送檻から出たい意識の方が強く働くので、
一時間もすると意を決して輸送檻から出てくるのですが、
今回は長旅用の輸送檻で空間も広めで、
寝室のような落ち着く環境になってしまっていました。
いざ扉を開けても輸送檻から出てきません。
彼女のペースで寝室内を覗かせ環境の確認をさせ、
寝室内にはおいしいものもあるよと誘惑を試みました。
扉から首を伸ばして周りを見回し、
手からリンゴも受け取るのですが、前足の一歩がでません。
一呼吸入れて、檻の天井の隙間から細い棒で体を触り、
ここは居心地がよくないんだよ作戦に切り替えました。

キリンは檻の中でくるくる回り
出口から顔を出すのですがぴたりと止まります。
次に檻に張ってあった、
目隠しの板を外しさらに不愉快な環境にしました。
後一歩で寝室と言うところまでいくのですがダメです。
ここで深追いをするとパニックを起こし
取り返しのつかない事故になりかねません。
あくまで最後は自分の意思で一歩を踏み出させなければいけません。
また一呼吸入れてから、
天井からのプレッシャーをかけつつ檻の横からものぞき込み作戦としました。
移動開始からほぼ4時間、ついにキリンは寝室に入り旭山の住人になりました。
その後もとても順調です。
キリンの雄ゲンキもソワソワ、ワクワクです。 
これから冬を迎えます。
南方系の動物を飼育するのに冬がハンデだとは考えていませんが、
雪が積もると足が滑ることを覚えてもらうこと、これが一番のハードルです。
一度滑り歩きを覚えたらもう心配はいりません。
平地に雪が積もる日もすぐそこに迫っています。


旭山に来園した雌のキリン

2015年10月18日日曜日

イボイノシシがやって来た! (平成27年10月)

気温、気候の乱暴な変化が続きましたね。
皆さん体調管理は大丈夫ですか?

9月上旬にボルネオに完成させた、
ゾウのレスキューセンターに行ってきました。
今年から本格的にゾウの救助が始まりました。
まだミルクしか飲めない子ゾウの保護の急増など、
さまざまな課題が山積しています。
ただ「見える化」できたことで、見学者が訪れるようになる、
現地のマスコミに取り上げられるなど、
ボルネオでの現状に多くの人が関心を持つきっかけとして
大きな役割を持ちつつあります。

晴天なのですがスモッグが掛かり、
日差しが柔らかかったです。
エルニーニョの影響で、
カリマンタン側で大規模な山火事が続いているためだそうです。

その影響で昆虫の生活環に変化が出始めているようだとのことでした。
昆虫は植物の受粉には欠かせません。
植物の結実への影響、実を食べるオランウータンなど
動物への影響が出始めているようです。
予測よりも早くさまざまな気候変動と、
その影響が進んでいるように感じました。

今回の訪問のもう一つの大きな目的は、
恩返しプロジェクトに台湾の台北動物園が協力を申し出てくれたため、
台北動物園の園長も一緒にレスキューセンターなどを見学し、
サバ州野生生物局長など関係する中心メンバーと会議を行い、
今後の協力などについて議論をしました。
アジア圏の保全は欧米主導ではなくアジア圏で行いたい、
との意見の一致を見ました。
今年中にもう一回は行くことになりそうです。

さて、動物園ではいよいよきりん舎かば館のメンバーがそろいつつあります。
イボイノシシの雄が先発でアメリカの動物園から来ました。
まだ体重は25キロくらいと子供なのですが、
もうあのイボイノシシの風格を醸し出しています。
僕の中でのアフリカのイメージは、「大地」です。
大地と共に生きているのがイボイノシシです。
怖い顔と不釣り合いな細い足と尻尾。
ほふく前進をしながら餌を食べる姿…
皆さんのアフリカに対して抱くイメージを変えるかもしれませんよ!


イボイノシシのドゥニア

2015年9月15日火曜日

「夜の動物園」を振り返って (平成27年9月)

8月の夜の動物園は、
夕方のゲリラ豪雨と連日の天気予報の午後から雨マークに
残念な思いが募りました。何か疲労感が重く残りました。

特にゲリラ豪雨は、近年にないくらいの短時間集中豪雨でした。
数年前に続いたゲリラ豪雨の教訓で雨水排水を強化整備して以来初めて破綻しました。
園内洪水でした。
ヒトは右往左往だったのですが、カバの百吉は大はしゃぎ、
雨を全部飲んでやると言わんばかりに空に向かって大きな口を開けたり、
バシャバシャと水中を飛び回っていました。
動物たちには蒸し暑さを忘れる恵みの大雨だったようです。

夏は日中暑いので動物たちはまったりとして動かないことが多いです。
元気がないのではなく省エネです。
動物は無理をしません。
気候に逆らいません。
旭山動物園がブーム最高潮のころ夏休みの暑い時期は
ホッキョクグマを見るのに一時間くらいの行列。
やっとホッキョクグマを見たお客さんから苦情の嵐でした。
テレビと違う…ホッキョクグマを泳がせろ!何が行動展示だ!
暑い中一時間も並んでお客さんのイライラは最高潮です。
複雑な思いでした。

でも、旭川の夏は夜になるとかなり涼しくなります。
僕たちも夏の夜は夕涼みがてら家の外に出たくなります。
焼き肉、花火…。動物たちも普段だと夕方には寝室に入るのですが、
夜涼んでもらおうとの思いが夜の動物園開催の大きな動機のひとつでもあります。

昼間と夜では動物たちの気配が変わります。
特に本来夜に活動が活発になるトラやオオカミ、フクロウの仲間など。
その正反対で夜は寝るサルの仲間も面白いです。
チンパンジーは夜8時ともなると熟睡、爆睡です。

オオカミの遠吠えと共に夜の動物園は閉園します。
今年は日中は異常に蒸し暑く、夜は過ごしやすい日が続きました。
ほんの短時間のゲリラ豪雨さえしのげば、とてもいい夜の動物園でした。
でもやはりゲリラ豪雨と天気予報の雨マークは来園しようと思っていた
多くのヒトの出鼻をくじいたのではないでしょうか?

よし雪あかりの動物園でリベンジですね。
天気と天気予報が味方をしてくれますように。

2015年8月17日月曜日

気付かぬうちに出産したレッサーパンダ (平成27年8月)

今は7月の中旬ですが
きっとあっという間に夜の動物園を迎えることでしょう。
先日天売島に泳ぎに…ではなくて、野良猫の状況や、
海鳥やアザラシに会いに行ってきました。

もう10年近く毎年訪れているのですが、
毎年新鮮で、つくづく奇跡のような島だなと思います。
100万羽近いと言われる海鳥たちの営みが
これからもずっと続いて欲しいと願わずにはいれませんでした。
元気をもらいました。

旭山動物園にいる天売野良ネコも少しずつヒトに心を開いてきています。
ヒトと野生動物そしてその間で翻弄される家畜種のネコ、働くネコ、愛玩のネコ…
いろいろと考えさせられます。 

さて、6月26日に生まれた
レッサーパンダのユーユーの子は順調に成長しています。
ユーユーは初めての子でしたがしっかりと母親をしています。

ユーユーは2011年中国生まれ、
父親のチャーミンは2011年鯖江市動物園生まれで、
ユーユーとペアを組むために2014年2月に来園しました。

昨年は、相性は悪くはないのですが、
グルーミングし合うなどのスキンシップが図れる距離に
近づくことがなかなかできずに交尾には至りませんでした。
もっともレッサーパンダの交尾期は2~4月くらいなので、
昨年は初同居がいきなり交尾期だったので
そりゃ無理だよな思っていました。
同居できただけでも大成功だったのです。
その後も同居は順調だったのですが、
チャーミンがじゃれ合おうと近づこうとするのですが、
ユーユーは何かが気に入らないらしく、
吊り橋の左右でにらみ合っていたり、
すれ違う時もそそくさとチャーミンから離れたりという状態が続いていました。

そして今年の交尾期を迎えました。
残念ながらお互いの距離は縮まらずに、
じゃれ合う姿や、ましてや交尾の確認もできませんでした。
うーんまだ若いし来年に期待かなと思いつつ交尾期は終わりました。

いつもと変わらず6月26日朝寝室の扉を開けると放飼場に出て行ったのですが、
夕方放飼場で出産していたのです。
胎盤の処理もしていたのですが子は死亡していました。
もしかしてもう一頭産む可能性もあるので急遽寝室に入れ落ち着かせました。
次の日産室の中に赤ちゃんが一頭、赤ちゃんに寄り添うユーユーがいました。

レッサーパンダの交尾の確認は発情期の行動などから、し易いと思っていました。
過去の出産例では必ず確認できていました。
チャーミンとユーユーはいつ交尾をしていたんだろう?
今までにはないペアーの形なんだろうか?
来年は観察カメラの設置も検討した方がいいのか?

とにかく今は、子が無事に成長するように見守っています。

2015年7月22日水曜日

動物たちの多様性を感じてもらいたい (平成27年7月)

さて6月中旬になり、飼育してきたカブトムシの幼虫32匹が蛹を経て続々と成虫になり
腐葉土の上に出てきました。
4月には32匹の幼虫は順調に成長していたのですが、
忙しくてちょっと世話をさぼり、5月下旬に慌てて大きな入れ物に移して蛹にさせようと思い、
慎重に腐葉土を掘っていくと、なんと蛹になっていました。

小型の衣装ケースだったので、過密な状態で皆ひしめき合って蛹室を作ったと思われ、
皆無事に蛹になれたでしょうか?
あえて掘り出さずに成虫になるのを待ちました。
現在28匹が無事成虫になりました。

昨年のオス親の成虫の大きさが78ミリくらいだったので、
それよりも大きな成虫になることを目指して、
自分としてはかなりまめに腐葉土を交換してきました。
結果80ミリの立派なオスが出てきました。
自己満足していたら、インターネットでカブトムシ大好きなタレントさんが
88ミリのカブトムシを育てギネスに申請!のニュースを見てしまいました。
ショックに言葉も出ませんでした。

カブトムシもクワガタムシも幼虫時代の栄養で成虫の大きさが決まります。
子供のころ製材所に積まれた木くずを取りに行っては幼虫を育て、
長い間木くずの交換をしないでいたら、
コガネムシかと目を疑うような小さな成虫になったのを思い出しました。
それにしても幼虫には大きく鋭いアゴがあり腐葉土を食べるのですが、
なぜ仲間を間違ってかじることがないのか、不思議です。

落ち葉や腐葉土を食べ分解しその糞が樹木の栄養になります。
成虫になると樹木からでる樹液を食べ栄養をつけ、
またたくさんの卵を腐葉土の中に産む、
きっと幼虫時代が生態系では大きな役割を果たしているのです。
僕たちはどうしても同じ空間、地上にいる姿を本来の姿と思いがちですが、
成虫は命のバトンタッチをする、ほんの短い期間の仮の姿とも言えるのかもしれません。

水中の世界もそうです。
水中が見えるガラス面がある水族館でイルカのショーがあると僕はひたすら水中を見ます。
水面上での姿よりも水中から飛び出す瞬間、着水してからの身のこなし、
水中での美しさに鳥肌が立つくらいに感動します。
水中が彼らの生活の場なんだと実感します。

空気よりも密度の高い水中で数百キロの体重があるのに、
あの鋭角的な動きでむち打ちにならないのかと心配になるくらいです。
ヒト基準じゃなく生き物の暮らしを覗いてみると、
ふと全くの別世界を感じることができる時があります。

多様な感性、感覚、能力があること、
その多様性をふと感じてもらえる動物園でありたいと思います。

2015年5月25日月曜日

新たな挑戦を続けていくために (平成27年5月)

さて恒例の閉園期間、一年で最も忙しい期間なのですが…
今年は過去経験のない早さでの雪解けでした。
閉園して一週間はひたすら雪割り、雪下ろしが全く必要ありません。
何か拍子抜けでのスタートでした。
例年夜にやる作業を日中からやるようにするなど工夫をしながら、
なんとすでにパネル作成や、ヒグマ、さる山のチップ入れ等々
追い込みで行う作業もこなしつつ日々に追われています。
なんと15日現在でこぶしのつぼみが膨らみ始めています。
桜の開花は4月27日と見ました。
さて結果はどうなっているでしょう?
開園の日に桜が満開!

動物園は従来の飼育展示係、管理係といった縦割りの組織を見直し
スタッフ制に移行したのですが、本格的に人的な交流を深め、
飼育をしていた職員を事務部門のスタッフに、
事務をやっていた職員を飼育部門のスタッフに内部で異動をしました。
旭山開園以来の大変革です。
新たな視点での取り組みや、仕事の価値観の共有など
大変だけど将来の旭山の大きな力になっていくと信じています。

役所的な発想で右と言われれば左を行く、
それが旭山の原点でもあるからこれからも前進するために、
飲み込まれないためにチャレンジは続けていかなければと思います。
とにかく皆一生懸命頑張っています。

今年の夏期開園からこども牧場の向かいにあったワシタカ舎を改築して
クジャク舎として生まれ変わりオープンします。
ワシタカ舎の鳥たちはバックヤードに繁殖用ケージを新設して引っ越しました。
クジャクの飛び回るたくましい姿を見ていただきたいなと考えました。
あの長い飾り羽根をぶら下げてほぼ垂直に飛び上がる姿は圧巻です。
鳥本来のたくましさを感じていただけるのではないかと思います。
現在担当者はいかにクジャクの習性を引き出せるのか、
止まり木の配置などに頭を悩ませているところです。
さてさてどんな獣舎に生まれ変わるか楽しみです。
こども牧場ではイヌの飼育も改めて始めます。
秋からの工事になりますがさる山のリフォームも控えています。
今年度もより豊かに命を感じられる場であるために努力をしていきたいと思います。

2015年4月19日日曜日

健康のために始めたペンギンの散歩 (平成27年4月)

もうすぐ新年度です。
記録的な少雪に妙に暖かい日が続きました。
とにかく冷え込みが緩かった、そんな印象でしたね。
そんな中ペンギンの散歩ですが、
例年3月からは一日一回にしているのですが、
今年は3月中旬まで一日二回の散歩となりました。

キングペンギンは気温がマイナス5度以下くらいになると
自ら水中に入るのを嫌うようになります。
魚は陸上で与えているのでますますです。
食っちゃ寝状態になります。
そこで、食事制限と考えるところですが、
よく動きよく食べる方が健康的なので、
キングペンギンは本来よく歩く鳥なので、
放飼場から出して散歩をさせようということから始めたことです。
最初は閉園後に行っていたのですが、
どうせならばと開園時間に行うこととしました。

平成14,15年度は本当にお客さんと散歩でした。
お客さんが今よりは少なかったからです。
それでも毎年10万人づつ増えていて
平成15年度は60万人を超え快挙と言われていたんですよ。
そして魔の16年度を迎えます。
一気に観光客が押し寄せるようになりました。
全く人員の足りない中でペンギンの散歩を続けました。
ルールは守ってもらえません。
ペンギンに触る人、ペンギンが取り囲まれる事態も生じました。
飼育係とお客さんのトラブルさらにはお客さん同士で場所取りの小競り合い…、
これが僕たちの求めていた結果なのか?何度ももう止めようと思いました。
散歩の出発前に、ルールマナーを守っていただけない場合は、
散歩を中断して引き返しますとアナウンスをしてから散歩に出かけました。
やり続け言い続け、今では完全とまでは言いませんが、
安心して散歩ができるようになりました。

話はそれましたが、キングペンギンの換羽は2月から4月に集中します。
3月は換羽中のペンギンが多くなり、
散歩にも出たがらなくなる個体が増えるために、
一日1回にするようにしていました。
今年はなぜか換羽の始まりが遅く一日2回が長くなりました。
ペンギンのために行っているのですが、
今年はお昼から来園されたお客さんもラッキーだったかもしれませんね。
雛2羽もキウィのような茶色のモコモコから親と同じ羽根に生え替わりました。
今年も雛の誕生を楽しみに、当たり前の冬が来ることを祈りたいと思います。

2015年3月18日水曜日

雄も雌も、子育てを学ぶ機会が必要です (平成27年3月)

原稿を書いている今は2月半ばの厳冬期、なはずなのに
じわじわと雪解けが進んでいます。
山の南斜面は土が見えている!どうしてしまったのでしょう。
このままだとペンギンの散歩が3月の早い時期に終了になるのではと、
あり得ないとは思うのですが、もしかしたらと心配になります。

オランウータンのリアンが第3子を出産しました。
7年ぶりの出産です。
子供から目を離しても心配なくなるまで排卵が止まるオランウータンなのですが、
それにしてもちょっと間が長かったのですが、無事出産しました。
モリト(7歳)が母親にべったりでリアンもなかなか子離れができずに
ジャックとの同居の苦労などいろいろありました。

飼育下では、本来ならばまだ母親と過ごしている3歳前後で
他の動物園に引っ越し新たな生活を始めることが一般的でした。

その理由は、新たな環境になじみやすい(飼育しやすい)、
2次性徴が始まってからだとペアの形成が難しい、
特に雌雄で体格差が大きいので事故の可能性がある(飼育が難しい)、
そして何より小さい方が可愛らしい(報道発表で受けがいい)…
よく考えると皆人間側の理由でした。

その結果、母親と過ごし、弟妹の誕生に立ち会い、子育てを共有し、独り立ちする
本来の成長過程を踏まないままに大人になるオランウータンが多くなりました。
雌雄で飼育しているのに繁殖しないペアーが多くなりました。
繁殖しても育児放棄し人工保育になってしまう場合も多くあります。
大人になると単独で生活するオランウータンの場合、
出産や子育ての学習の機会は
母親と過ごしている間の一回の出産に立ち会う時しかありません。

リアンの場合も6歳で当園に来たのですが弟妹ができる前でした。
リアン第1子出産の時は生みっぱなしで触ることもできませんでした。
介添保育を行い母親になりました。
第2子モリトの時はすぐに抱っこしたのですが、
胎盤の処理(食べてしまう)ができずに、へその緒の処置は僕たちで行いました。

メスの子の場合は、母親と過ごす時間はとても大切だと改めて思います。
ではオスの子は?
飼育下では交尾ができない、メスに対して乱暴といった問題が多くあります。

やはりオスの子も出産育児を共有することが大切なのではないか?
やんちゃでリアンももてあまし気味なので心配もあったのですが、
今回の出産はモリトも同居のまま行いました。

今回は完全に処理するまでではなかったのですが、胎盤も食べました。
しかもモリトも一緒にです。
母子2頭、口の周りが真っ赤でした。
そして母親が抱く子をそばでじっと見つめています。
そっと手を出すのですがリアンに怒られます…。
モリトはきっと立派なオスになる。
そう確信できました。

2015年2月17日火曜日

アムールトラのキリルとザリア (平成27年2月)

さてさて全く冷え込まない日々が続いています。
例年ならばあざらし館のプールの凍らせ作戦や、
雪あかりの動物園のための風船、
アイスキャンドル作りを始めていなければいけないのですが…
週間天気予報とのにらめっこが続いています。
雪も少ないし。
まぁ愚痴っていてもしかたがないのですが、
天候に逆らおうなんて考えてもしかたのないことです。
時を待つしかないのです。
っていいながらこの号がでる頃にはどうなっているのかとふと心配になります。

先日ネットでニュースを見ていたら、「沖縄でフラミンゴ」の記事が出ていました。
「もしかして!」「生きていたのか(^O^)」「沖縄で捕獲作戦か!」
「作戦はできている!」「沖縄なら楽しいかも(^O^)」等同時に複数の考えが頭を巡りました。
やはり未だに気になっている自分に気づかされました。

しかし冷静に写真を見ると、
羽根のこげ茶の模様、体型などから1~3歳くらいの亜成鳥であると思われ、
旭山のフラミンゴではないと判断できてしまいました。
どこから来たのか不明、とありましたが、
野生個体の亜成鳥が一羽でということは迷鳥としても考えにくく、
飼育下の個体と考えられます。
フラミンゴは個人でも飼育することが可能ですし、
昔は遊園地などでも飼育されていました。
沖縄でなければ近隣の国の飼育個体ということも十分に考えられます。

昨年9月にアメリカの動物園から来園したアムールトラ、
たくさんの方からお披露目はまだか?の問い合わせをいただいていました。
オスは5歳メスは4歳でもうすっかり成獣で、別々の動物園で生まれ飼育されてきました。
本来であればもっと早くにペアーを組んでいていい歳です。
個体情報から日本での一般的なトラの飼育方法とは
大分違う環境で育ってきたことがうかがえました。
朝寝室から放飼場、夕方放飼場から寝室というルールで飼育していないようでした。
成獣になってからの環境の変化、特に飼育の仕方の大きな変化への順化は時間がかかります。

というわけで、寝室から別の寝室への移動から始まり、
個体にストレスをかけないように徐々に旭山の飼育環境に慣れるように
じっくりと時間をかけました。
オスのキリルは後は放飼場に出すまでになっていたのですが、
「たくさんのお客さんを見ると興奮してパニックになる」という理解に苦しむ情報がありました。

そこで休園期間の正月に放飼場に出してみました。
複数の職員で見守っていたのですが、
当初は檻越しにアタックをしてきたのですがすぐに収まり
となりのライオンにも目を合わせるだけで興奮する様子もありませんでした。
一月の初旬からキリルの放飼、展示を始めました。
メスは?なかなか寝室でリラックスしてくれません。
もう少し時間が必要です。

2015年1月18日日曜日

キングペンギンのひなは散歩に出るか? (平成27年1月)

さてさて皆様は新年をどのように迎えられたでしょうか?
動物的に365分の1日に過ぎないのだと思う一方で、
やはりヒトとしての性で何か特別な通過点であり、
改めての振り返りと新たな前進のスタートの日でありますね。

昨年はマリモの死、旭子の入園、オオカミ、タンチョウ、レッサーパンダなど
たくさんの命の誕生、アムールトラの入園…たくさんの命との出会い、お別れがありました。
今年はいよいよヨーロッパからイボイノシシ、ロシアからアムールヒョウの来園が決まり
手続きが進行しています。

施設のリニューアルは、こども牧場前のワシタカ舎をクジャク舎としてオープンすべく
改修工事を行っています。
新クジャク舎のオープンは新年度からとなります。
「クジャクは地面だけにいる鳥ではない」がテーマです。

さて冬と言えば、すっかり旭山の風物詩となったペンギンの散歩、
その主役はキングペンギンです。
今シーズン初めて茶色の雛が2羽成長しています。
野生であれば雛はクレイシという雛だけの集団を作り、
親鳥が海から捕ってきた餌を運んでくるのを待つのですが、
動物園では親鳥と一緒に散歩に出かけるようになったりします。

さてこの2羽はどうなのでしょうか?
今までは散歩に出かけたはいいけど途中で嫌になり歩かなくなり、
そのたびに雛だけを抱えてぺんぎん館まで持ち帰ったりとけっこう手を焼かせてきました。
2羽同時に散歩に出て歩かなくなったらどうしようかと今から頭を悩ませています。

実はこの雛の一羽は、雄同士ペアーに育てられています。
旭山のキングペンギンはもともとメスが少ないこともありますが、
食べ物と安全が保証され「ゆとり」がある環境が大きく影響して、
ある特定の雄がモテる傾向があります。
一羽の雄が2羽のメスと交尾し産卵します。
どちらか一羽のメスが単独で抱卵することになります。
でも抱卵や育雛は2羽で交代しなければできません。

そこで雄同士ペアーに卵を預ける作戦にしました。
ペアーを組めなかった雄は擬似的に雄同士でペアーを組むものが現れます。
争いを避ける仕組みがあるのだと思われますが、
お互い相手をメスだと思い込むことでペアーになる…
彼らの心境を考えるとちょっと心が痛いですね。

そのペアーに擬卵を与えると、アレッ!?お互いに相手がほんとにメスだった、
ということになります。
さらに複雑な心境に…。
孵卵器に入れておいた本物の卵が嘴打ちをした段階で擬卵とすり替え、親元で雛が孵ります。
今年はこうして順調に雛が育っています。
暖かく見守っていただければと思います。