2015年7月22日水曜日

動物たちの多様性を感じてもらいたい (平成27年7月)

さて6月中旬になり、飼育してきたカブトムシの幼虫32匹が蛹を経て続々と成虫になり
腐葉土の上に出てきました。
4月には32匹の幼虫は順調に成長していたのですが、
忙しくてちょっと世話をさぼり、5月下旬に慌てて大きな入れ物に移して蛹にさせようと思い、
慎重に腐葉土を掘っていくと、なんと蛹になっていました。

小型の衣装ケースだったので、過密な状態で皆ひしめき合って蛹室を作ったと思われ、
皆無事に蛹になれたでしょうか?
あえて掘り出さずに成虫になるのを待ちました。
現在28匹が無事成虫になりました。

昨年のオス親の成虫の大きさが78ミリくらいだったので、
それよりも大きな成虫になることを目指して、
自分としてはかなりまめに腐葉土を交換してきました。
結果80ミリの立派なオスが出てきました。
自己満足していたら、インターネットでカブトムシ大好きなタレントさんが
88ミリのカブトムシを育てギネスに申請!のニュースを見てしまいました。
ショックに言葉も出ませんでした。

カブトムシもクワガタムシも幼虫時代の栄養で成虫の大きさが決まります。
子供のころ製材所に積まれた木くずを取りに行っては幼虫を育て、
長い間木くずの交換をしないでいたら、
コガネムシかと目を疑うような小さな成虫になったのを思い出しました。
それにしても幼虫には大きく鋭いアゴがあり腐葉土を食べるのですが、
なぜ仲間を間違ってかじることがないのか、不思議です。

落ち葉や腐葉土を食べ分解しその糞が樹木の栄養になります。
成虫になると樹木からでる樹液を食べ栄養をつけ、
またたくさんの卵を腐葉土の中に産む、
きっと幼虫時代が生態系では大きな役割を果たしているのです。
僕たちはどうしても同じ空間、地上にいる姿を本来の姿と思いがちですが、
成虫は命のバトンタッチをする、ほんの短い期間の仮の姿とも言えるのかもしれません。

水中の世界もそうです。
水中が見えるガラス面がある水族館でイルカのショーがあると僕はひたすら水中を見ます。
水面上での姿よりも水中から飛び出す瞬間、着水してからの身のこなし、
水中での美しさに鳥肌が立つくらいに感動します。
水中が彼らの生活の場なんだと実感します。

空気よりも密度の高い水中で数百キロの体重があるのに、
あの鋭角的な動きでむち打ちにならないのかと心配になるくらいです。
ヒト基準じゃなく生き物の暮らしを覗いてみると、
ふと全くの別世界を感じることができる時があります。

多様な感性、感覚、能力があること、
その多様性をふと感じてもらえる動物園でありたいと思います。