2001年8月30日木曜日

オランウータン舎!いよいよオープン(平成13年夏)

さて,オランウータン舎のオープンも何とか無事にすみました。
8月10日の午前中に役所の仮検定を終わらせ、引き渡しを受けました。
オープンは2日後に迫っているので、
さっそく午後から放飼場にウータンを出すことにしました。
すぐに登るか手こずるかのどっちかだと意見は分かれたのですが、
悪いことに手こずる方になりました。

3ヶ月くらい部屋に閉じこめられて、
久しぶりに放飼場に出ると別世界だったのですから、
当たり前かもしれませんが、
彼女リアンにとっての最初の衝撃は
脱走防止用の最終手段・電気柵に触わったときでした。
手で触ればいいものを唇で触ったのです。
一瞬クラッときて檻から落ちそうになったのですが、
担当者が下からささえて事なきを得ました。
電気柵は早く覚えて欲しかったので僕らにしたら予定通りでした。

しばらくして、リアンは放飼場の中の探索を始めました。
そして空中放飼場に続く擬木に目を付けました。
数㍍よじ登り銀色の突起を見つけました。
これは僕もチェックしていなかったのですが、
ここには冬期の転落防止用に電柵を回す取り付けがあって、
この基部にも電気がきていたのです。
これを触ったリアンは感電。
どこを触っていいのか半信半疑になり
部屋に入りたいと扉のそばから離れなくなりました。
その日は無理をせずに部屋に収容しました。

翌日朝から放飼場に出しました。
脚立をかけて擬木に登りやすくしました。
僕らがバナナやブドウを持って登ると
ついてきて登るようになってきました。
もちろん僕らは管理用のタラップを使いました。
でもリアンは僕らが登った高さから上には行きません。
怖いけど意を決して高さ16㍍まで登りリアンを呼びました。
空中散歩のスタート地点までは来るようになりました。
結局その日は、ここまでで終了。
明日はオープンです。

朝10時テープカット。
リアンの登場。
集まった来園者は空中散歩を期待しています。
しかしリアンは・・・

仕方ない、怖いなんて言ってられない。
スタート地点までリアンを誘導。
空中放飼場側にも一人登ってリアンを呼びました。
しかしリアンは・・・

もしや大好物のブドウを房ごと見せびらかせば・・急きょ買いだし。
見せびらかしながら空中放飼場のN君に。
黙って見てはいられないリアン。
あっさりと空中散歩!そしてブドウのご褒美。
お客さんからは拍手喝采!N君おだってピースサイン。
思い出に残るオープン式でした。

オランウータンのリアン

画:ゲンちゃん

2001年3月30日金曜日

オランウータン舎の改修工事スタート(平成13年春)

オランウータン舎の改修工事がいよいよ始まりました。
8月19日にオープンする予定です。
それまでの間、オランウータンとラクダは見ることが出来なくなります。

現在の放飼場のオリの天井を抜いて、高さ15㍍の鉄塔を立て、
そこからロープを伝い、
オリで囲われていない空中放飼場に行くようになります。
見晴らしはいいし、さぞ気持ちがいいことでしょう。
前例のないアイデアを実現するのですが、
このウータン舎の成否は、
飼育下生まれとはいえウータンは高いところを怖がらない、
木から木に移動する時、両手両足を宙に浮かせて飛び移ることはしない、
水の中には好んでは入らない、これが必要条件です。
何事にも例外はあるけど、うちのリアンがそうでないと信じましょう。

そういえば、先日水中を胸まで水に浸かって歩くゴリラのテレビを見ましたが、
ゲゲッとびっくりしました。
ウータンもゴリラもチンパンジーも泳げないので極端に水を怖がります。
特にゴリラは絶対に水に入らないと言うのが定説です。
本州の動物園に行くと檻の替わりに
深い水堀を使っているところもあるのですが、
きっとその動物園の人は、僕どころじゃなくびっくりしたのではないでしょうか。
泳いだりしていなかったのでよかったけど、
泳げたら水堀を渡って逃げちゃいますよね。
当園の場合、空中放飼場の受け皿で水が張ってあって、
下に降りられたら困るからなのでまだいいのですけどね。

うちの場合、2番目の条件が脱走防止の要です。
リアンや昨年死亡した釧太郎を見ていると
天井から吊したロープにぶら下がり、
ぶらぶら揺れて、たまたまその先に壁があると
マンガのようにそのまま頭から壁に激突します。
機転をきかせてどこかに飛び移ると言うことは決してありません。
チンパンジーと比べると運動神経ゼロみたいです。
今、リアンの旦那を捜しているのですが、
まさかそのウータンが運動神経ありだったらどうしようと…
先のテレビを見ていてちょっと不安になりました。

獣舎を建て始めると、もしものことばかり考えて、
夢でうなされる日が続きます。


リアンの旦那さん、ジャック画:ゲンちゃん

2001年1月30日火曜日

毛虫 (平成13年1月)

さて,今年は蛇年ですね。
みなさんの嫌いなヘビですね。
年賀状のデザインも苦労したのではないでしょうか。

どうも,手足のないヘビやミミズ,
手足の数が異常に多いムカデや毛深いクモやケムシは
生理的に嫌われる傾向があるようです。
ケムシなんか手足もないように見えますから究極ですね。
ただし,毛深いのが嫌われるのは
性的な感覚が関与するからだって言われてますけどね。
僕はケムシが気絶するほどダメなのですが,
これは生理的というより昔の経験がそうさせています。
小さい頃は毛虫をたくさん捕まえて砂に埋め,
誰が一番先に出てくるかなんて遊んでいました。
ケムシは好きな方でした。

子供の頃,学校の帰りに垣根の葉をむしって,
手でもみつぶしたりして歩きますよね。
その時「なんかネチョネチョするな」
とふと手を見たらケムシがつぶれていたのです。
ぶっ倒れそうになりました。
これが2回もあったのです。
さらに,父親と虫取りで山道を歩いていて,
ふと目の前に巨大なケムシを発見し,
前に進めなくなったら,父親が「男のくせに情けない」と,
あろう事かそのケムシを虫かごに入れて歩かされたのです。
一生,ケムシアレルギーから
開放されることはないと断言できる体験ですよね。
ちなみに毛のないアゲハの幼虫なんかは平気で,
むしろ可愛いくらいです。

さて,ヘビが嫌いなあなた,何かいやな体験をしましたか?
きっと実物のヘビすら見たこともないのに
嫌いな人が多いのではないでしょうか?
実は,サルの仲間は特に高等になるほど
本能的にヘビが嫌いなみたいです。
チンパンジーはアオダイショウが
放飼場の外を這っているだけで大騒ぎです。
テナガザルもそうです。
ゴリラなんか放飼場の中に入ろうものなら逃げ回っていました。
別に,いやな体験があるわけでもないのに,怖がる理由もないのに
異常なまでの反応をするのです。

はるか昔,僕らの祖先がネズミのような生き物だった頃,
ヘビや爬虫類は天敵でした。
そのころの記憶がインプットされて受け継がれ
本能的にヘビは嫌いなのかもしれません。
だけど,触ってみるとなんだけっこうツルツルして気持ちいいじゃんとなると,
可愛いかもとなります。
さすがヒト,学習ですね。

そういえばもう一つ,類人猿は金槌です。
泳げません。金槌の人,安心してください。
動物には珍しく,もともとは泳げないのです。
人はもともと泳げると言って,
赤ちゃんが水中で目を開けて泳いでいるテレビを見たことありますが,
あれってそのままにしておいたら息継ぎできなくて死んじゃいますよね。

今年は蛇年,こども牧場でヘビを触って,サルからヒトに進化してください。