2006年4月28日金曜日

動物園の役割とは? (平成18年4月)

さて,もうすぐ春ですね。
冬の間から園内では沢山の工事が行われていたのですが,
今年は雪解けも早く工事関係の方にはありがたい年だったのではないでしょうか。
もちろん雪解けが早いことがいいことばかりではないのは承知しているのですが…
ペンギン散歩も早く終わったし。

先日,名古屋で動物園の役割を科学するという研究会があり,参加,発表してきました。
動物園には娯楽,教育,研究,保全の4つの役割があると言われていて,
4つの分野について討論をしようという主旨の研究会でした。
僕は娯楽と言うか,憩いの分野で行動展示の効果という題で話をしました。
それぞれの分野を専門として独立した施設は研究所や学校と言ったようにあるわけで,
ではなぜ分業ではなく動物園として4つの役割があるのか?
それは対象としている動物たちがいかに素晴らしく尊いものであるかを
伝えられる場であるからだと思います。

素晴らしく尊いもの,命を通しての教育,研究,保全であり,
研究,保全の対象がここにいる尊い動物たちのためであることを
具体的に理解してもらえる場であり伝えられる場であるからこそ,
動物園には4つの機能,役割が求められるのではないでしょうか。

娯楽,レクリエーションなど言い方はさまざまですが,
僕の中では動物のいる空間の居心地の良さであり,
動物たちの尊さを感じてもらうことです。
僕はこの部分が動物園にとって最も大切なことでベースだと思っています。
芸やショーで来園者の気持ちを引きつけていたのでは,
教育,研究,保全すべての必要性,重要性,価値を認めてもらえないし,
将来に向かっての動物園そのものの存在意義が見えてこない気がします。

僕たちは自分たちが動物との関わりの中で知ったことを
いかに来園者に還元できるのかを基本に考えています。
僕たちが飽きることがない動物たちはありのままの彼らです。
ですから,ありのままをありのままに伝える方法として
「行動展示」と呼ばれるようになった見せ方を考え出しました。

ペンギンの散歩,
いつも沢山の来園者でイベントのようになってしまいましたが,
さえぎる柵のない空間で観る彼らの姿を観てほしくて,
可愛いだけではない彼らを観てほしいと思いました。
「目つきが怖い」「くちばしが鋭い」「足がでかい」「凛々しい」…
何かひとつでもありのままの彼らを見つけてもらえればと願っています。
カメラを構えて記録に残すことだけに専念する人が多くてちょっと残念です。

入園者数を記録的に伸ばした旭山動物園,
北海道有数の観光施設,
それは僕たちにとって旭山動物園の本質ではありません。