2006年6月28日水曜日

キリンその後 (平成18年6月)

キリンの名前は東山動物園でつけて頂いたのと同じ「マリモ」で決定しました。
旭川らしいではなく北海道らしい親しみを持てるいい名前ですね。
旭山動物園もいつの間にか旭川のというよりも
北海道の動物園として見られるようになり,
そのことを改めて実感する愛称です。

「マリモ」は名古屋の東山動物園から,
頭がつかえない高さ約3メートルの箱に入れられ,
トラックに乗って運ばれてきました。
ゴー,ストップが出来るだけないように
高速道路と船を使い,やってきました。
立った状態で手すりにつかまらないで
バスに乗っている自分を想像してみてください,
一般道を走るとマリモが疲れてしまいますよね。
動物園に到着してまず寝室に収容しました。
寝室に慣れさせ,食欲が安定してから放飼場に出す予定でした。
キリンも野生動物ですからヒトになついたりヒトに依存したり,
しつけが出来るわけではありません。
僕たちは,あくまでもまりもが自主的に放飼場に出てくれるように,
そうしたくなるように工夫をするのです。

キリンは見た目の印象とは異なりとても神経質な動物です。
新天地に来て最初の数日間がとても大事です。
ところが,マリモはとてもおっとりしていて,翌日には食欲も出て,
寝室では妙にくつろいで見えました。
「これは意外と早く旭山に馴れてくれそうだ」と思いました。

数日間寝室で過ごし,そろそろ放飼場に出そうと扉を開けました。
ここからが誤算でした。
初めて見る景色,そして初めて間近で見たであろうカバの姿。
特にカバが彼女の気持ちを不安なものにしたようです。
お化け屋敷で何かが怖いと思うと
何でもないものでも怖く見えてしまいますよね。
マリモもそうでした。
不安が募るといても立ってもいられなくて走り回ります。
前回も書きましたがこれが一番危険な状態です。
これはマリモに自分で解決してもらわなければいけません。
ということで5月半ばを過ぎても
朝から夕方まで放飼場に出しておくことが出来ませんでした。
ちょっと意外な一面でした。

6月に入りマリモは旭山の環境にも慣れてきました。
開園時間中は放飼場に出ていても落ち着いているようになりました。
野生種の動物は種としての習性や性質が
とても大きな部分を占めています。
でも,よく観察すると個性があります。
身体能力にも差があります。
同じ種でも個体によって飼育しやすいものと手こずるものがいます。
差があるとすぐに比較をして優劣といったレッテルを貼りたがりますが,
これはある特定の基準から見てであって
見方を変えれば長所かもしれません。
マリモはちょっと臆病で放飼場に慣れるまで時間はかかりましたが
マリモにはマリモのペースがあります。
でもこの臆病で慎重な性格がきっといつか役に立つ時があるでしょう。