2004年5月30日日曜日

鳥インフルエンザ(平成16年5月)

今回は、あまり気が進まないけどやはり鳥インフルエンザのことを書きます。

問題の鳥インフルエンザは正しくは高病原性鳥インフルエンザで
鳥ペストって言っている伝染病です。
家畜伝染病予防法では法定伝染病に指定されていて
ニワトリ、アヒル、ウズラ、七面鳥には治療を行わず、
速やかに処分して病原体の撲滅を図ります。

一口に鳥インフルエンザといってもたくさんのタイプがあって、
現在問題になっているのはH5N1型です。
1997年に香港で初めて確認された新顔です。
去年から今年にかけて大流行して、
世界で数千万羽のニワトリが死亡あるいは処分されています。
経済的あるいは「食」に対する重大な脅威です。
さらにニワトリだけではなく、ワシタカ、フクロウ、
コウノトリの仲間、カラスなど
分類学上距離のある鳥類にも感染力があり、強い病原性を持っています。

このことが感染症を防ぐことを難しくし、
動物園としても重大な危機感を持つところです。
そして社会的な不安の原因は、ごく希ですがヒトへの感染が認められ、
致死的な病原性があることでしょう。

日本の衛生環境ではまず起きえないでしょうが、
このウイルスは自己修復機能がなく、
容易に変異する特徴を持っています。
もしこのウイルスが同じ仲間の人インフルエンザウイルスと出会い、
人同士で感染するタイプに変異したら、
想像も出来ない悲惨な事態になるとWHOでは考えていて、
厳重な監視体制を敷いています。

何で、今降ってわいたように?それとも、やっぱり野生動物は怖い?
僕は人間が生み出した怪物だと思います。

過去にヒトで大流行したインフルエンザは
鳥型と従来の人型ウイルスが
家畜のブタに感染し変異したためと考えられています。
今回は経済的な成長が著しい中国や東南アジアで大発生しました。

インフルエンザはもともとはガンやカモの仲間の腸管の中で生きている、
彼らには病原性のないウイルスです。
ごく希に他の種類の動物に感染したり、強い病原性を持ったりします。

富を優先するあまり衛生面やニワトリの健康に配慮しない
無秩序な大量飼育などは、
ウイルスにとっては信じられないような新天地です。
彼らは水やアヒルをとおして侵入してきました。
そして驚異的な感染力と病原性を持った怪物が生まれたのです。

近年のエボラ出血熱やBSE、SARS、
そして高病原性鳥インフルエンザ、
ヒトのおごりに対する強い警告のようにも思えます。
最後通告に近づいているように思えてなりません。

旭山動物園ではウイルスの侵入を何が何でも食い止めるために、
万が一の可能性を考えて、傷ついたり弱ったりした野鳥の保護活動、
アヒル、ニワトリのふれあいを一時的に止めました。

少なくとも、今後数年間は、
冬が来るたびに僕たちはこの怪物に怯えなければいけないのです。


ニワトリ

画:ゲンちゃん