2003年9月30日火曜日

動物園とは…(平成15年秋)

恒例の夜の動物園も終わりました。
きっと足早に秋が訪れるのでしょうね。
今年は夜に限らず入園者数がこちらがとまどうくらいに増えています。
確かにとても嬉しいことで、なんだかんだといっても
見に来てもらえなければ始まらないので、
その意味では大成功です。

17年前に夜の動物園が始まったのですが、
その当時はせっかくやるのだからと
毎晩仕事が終わってから郊外に出かけ
ホタルを探し飼育法を勉強しました。
そして、ほんの数匹を虫かごに入れて見てもらいました。
どうしてホタルはいなくなったのだろう?
たとえば水田に農薬をまく時期とホタルの最盛期が一致しているので、
農薬でほとんどの成虫が死んでしまい、
その後に羽化するのはほんの少ししかいないこと等を説明していました。
カブトムシも北海道では外来動物であること、
卵から成虫までの成長等を屋外でスクリーンを張って、
映写機で説明をして実際に飼育をしてみよう!
とカブトムシのさなぎをペアーでプレゼントしていました。
もちろん自分で採集してきてました。

動物園は、自然や野生動物との
架け橋になるべき施設だとずっと思っています。
来園された人にいかに伝えるかがとても大事です。
「昔はこまめに対応できていたな。」とふと思い出します。

そして、本州で養殖したホタルを購入して始めた「ホタルの小径」では
いつしか長蛇の列ができるようになりました。
せめてホタルの姿形だけでも見てもらいたいと、
小径の入り口で手のひらにのせたホタルを
小さな懐中電灯で照らして見てもらっていました。
それすらも今年はできないほどの行列になってしまいました。
どうしても流れが遅くなるからです。
「これではいけない。」と思い、
後半は行列の中間で見てもらうようにしたら遅れもなく対応できました。

暗闇で光るホタルを見てみんな感動しているのですが、
はたして身のまわりの環境に思いが馳せているでしょうか?
現実と切り離されたものとしてみていないでしょうか?
夜の動物園の期間は日中でもどの建物も行列でした。
水中トンネルのペンギン、
アザラシ目線のカプセル、
空中散歩をしているウータン。。。
それを見るので精一杯で、とてもゆとりなんてありません。
どこかのテーマパークのようです。
たくさんの命に囲まれた空間の気持ちよさを感じてもらえたでしょうか?
何かとても不安になります。
動物園は現実と切り離された施設になっては絶対にいけないのです。

ホタル

画:ゲンちゃん

2003年4月30日水曜日

野生動物との共存(平成15年春)

やっぱりフルタイムの夏期開園は気分が違います。
みるみる緑が濃くなって花が咲いて命の力強さを感じますね。
今年は恒例の秋の獣舎オープンがありません。
これで入園者が減ったら「やっぱり話題性だったんだね。」
になって悔しいです。
動物園で展示しているのは命です。
飽きられる様なことをしてはいけないと思っています。
とかいいながら今はちょっと5月病です。
いつも4月の夏期開園準備期間に一度燃え尽きてしまいます。
「ふむふむパネル」はまだまだたくさん作らないと、と毎日が過ぎています。

話は変わるのですが、1995年から北海道が
(財)日本野鳥の会と共催で「ヒナを拾わないで!!」
キャンペーンをやっています。
知ってました?知らない、やっぱりって感じですけど、
動物園ではこれからが保護動物の持ち込みのピークを迎えます。
そして半数以上がヒナや巣立ちした若鳥です。

このキャンペーンの趣旨は、巣立ちビナが、
もしも地面に落ちていてもそれは自然界のできごとなので、
かわいそうだけで拾ってしまうといった
干渉はしないようにしましょうというものです。
チゴハヤブサというタカの仲間がいます。
旭川でも市街地で繁殖しています。
このチゴハヤブサが雛3羽を巣立ちさせるのに
300羽以上の小鳥を餌として捕まえてきます。
小鳥の多くは飛び方が上手でない、
あるいは独り立ちがうまくできずに弱った巣立ち後の小鳥が多いのです。
食物連鎖と一言で言いますが、そこには必ず死があります。
死ぬであろう命を見つけたときどう感じるか、どう対処できるかは、
どれだけ知識があるかで大きく変わりますね。

ただ、明らかに僕たち人間の営みが原因で弱った巣立ちビナもたくさんいます。
河川敷の草刈り、街路樹や庭木のせんてい、ガラス窓への衝突、農薬中毒・・・
これは僕たちが責任をとらなければいけません。
 
これから野生動物との共存を考えるとき、僕たちが奪いすぎた環境の中に、
どれだけ彼らを戻すことができるかを考えることが必要でしょう。
そこには人為的な営みが原因で
失われるであろう命を目の当たりにする機会も増えるでしょう。

人間が犯してきた罪をどう償うのか、
何ができるのかちょっと考えてみて下さい。

チゴハヤブサ

画:ゲンちゃん