2009年1月3日土曜日

新年のごあいさつ (平成21年1月3日)

みなさま あけましておめでとうございます。
今年は何が起こるのかわからない、見通しのきかない年になりそうですね。
どっちかと言えば暗い年になりそうですが、
いろんな意味で、これからの未来に向かった
新たな価値観や仕組みの構築が始まる年になるのでしょう。
まぁ考え方を変えれば激動のまっただ中を体験できるし、
自分たちが主役にもなれる可能性があるともいえるでしょう。
 
今の社会は明らかに「個」の時代です。
個の権利がとても強く主張され、僕には「これでいいの?」
と思えることが多くあります。
個はとても大切ですが、全体があって初めて個として存在できます。
全体があること、つまり社会や国があることの意味を
今一度しっかりと考えないといけない気がします。
ヒトは飛び抜けたコミュニケーション能力を持ち、
異常ともいえる密度で生活をする仕組みを作り上げてきました。
 
僕は東京など都会に出張に行くと違和感を感じることがあります。
山手線に乗ると(これしか乗れない(^_^;))隣や向いの人が
あたかも周りに誰もいないかのように振る舞っています。
携帯やゲーム機をいじっている人、化粧をなおしている人、
本を読んでいる人…
自分一人の部屋にいるかのような表情をしています。
目があっても人を見ている目ではなく
ポスターか何かを見ているように感じます。
確かにあの雑踏の中にいると人として意識していては
とてもじゃないけどやっていけない気はします
(田舎ものの僕は人人人…に見えるので
都会への出張は精神的にとても疲れる)。

関わりを持たないこと、いやなところは見ない、
都合のいいところだけ関わることで
集団生活が維持される方向にあるようです。
もはや社会ではなく集団です。
 
動物園も当然、時代や社会を反映する一面を持っています。
各地の動物園で個体のスターが誕生しているのも
時代を反映しているといえるでしょう。
一方で地球規模での気候変動や環境破壊などの問題解決が
急務となっていて、生物多様性、保全といった言葉を
頻繁に耳にするようになりました。

この言葉の意味するところは、もはや個体を保護、愛護する視点では
問題を解決できない段階に来ていて、
全体の仕組みそのものを守っていかなければいけないという視点に立った
方向性を示しています。
擬人的な興味から生まれた個体のスターから野生動物、環境の保全、
共生の感覚は非常に生まれにくいのではないかと思います。

旭山動物園は、それぞれの動物らしい命の営みを
淡々と伝え続けていきたいと思います。
その理念をとおして、
動物園が存在するからこそできることを具体的な形にしていく
スタートの年にしたいと考えています。

今年もみなさまにとってよい年でありますように。
09新年(ゲンちゃん画伯)