2009年4月30日木曜日

悪者は誰? (平成21年4月)

今年も例年になく早い雪解けでした。
4月の中旬まで雪割りに汗を流していたのがうそのようです。
流氷も早々と沖に姿を消し、ゴマフアザラシたちが心配です。
流氷の上で生まれたゴマフアザラシの赤ちゃんは、約3週間で離乳します。
離乳した子はたどたどしい泳ぎで、
自力で食べ物を確保しなければいけません。
水深の深い沖合いの海では食べ物を採ることが出来ません。
 
4月は越冬をしに日本に渡ってきていた渡り鳥が
繁殖のために北に向かう季節です。
オオハクチョウも群れでシベリアを目指します。
北海道では昨年5月に
野付半島とサロマ湖で死亡していたオオハクチョウ各1羽から
高病原性鳥インフルエンザの感染が証明されました。
その後の水鳥類の糞便を中心にした疫学調査からは、
ウイルスはみつからず、オオハクチョウを含め鳥類の大量死や、
罹患個体(病気にかかっている個体)も見つかりませんでした。
オオハクチョウからの高病原性鳥インフルエンザの発生を受け、
昨年の秋から水鳥類への餌付け自粛が広がりました。
それに伴いハクチョウたちの行動にも当然変化が現れ始めました。
人とのかかわりが
より自然な関係に向かう出発点となればいいと考えています。

ところが、3月7日付けの新聞に
「タンチョウ、鳥インフル感染の危機 阿寒 餌場にオオハクチョウ」
という記事が載っていました。

高病原性鳥インフルエンザと鳥インフルエンザを区別していないという
根本的な誤りもあるのですが、
タンチョウの餌場にオオハクチョウが現れるようになったので、
追い払いを考えなければいけないといった趣旨の内容でした。
あまりに短絡的で危険な記事だと思います。

平成6年にエキノコックス症発生で閉園した際の
キタキツネに対する反応を思い出します。
それまでマスコット扱いで可愛がり餌付けをし、
人の生活圏に招きいれておきながら「怖い」となると
手のひらを返すように悪者扱いになりました。
ましてオオハクチョウは昨年「単発的」に発生が確認されただけで、
オオハクチョウも被害者である可能性が高いのです。

タンチョウは過去に絶滅のふちから冬場の餌付けにより個体数を増やし
絶滅を回避した経過があります。
生息環境が悪化し続ける中で餌付けにより個体数が増え、
近年ではタンチョウによる農作物の被害も問題になり始めています。
タンチョウも「悪者」になる可能性を秘めています。
良くも悪くも人が深く係ることが問題の発生源であることを
自覚しなければいけないのではないでしょうか?

もっと言えば人の生活とはそういう一面を持っていることを知ることから
問題解決を考えないといけないのではないでしょうか?

オオハクチョウは悪者ではないのです。
一方的な愛情!?(ゲンチャン画伯)