2009年10月30日金曜日

テナガザルの珍事件 (平成21年10月)

 秋です。
食欲の秋です。
食べ物には敏感に反応してしまう自分がいます。
この時期,事務所にはなぜか,
日本各地の銘菓がちりばめられているので大変です。
お菓子に手を出すのは,
食べたいと思った3回に1回と決めているのですが,
食べたいと思う回数が多いらしく
結果として他の人より多く食べてしまっているようです。
ヤバイ季節ですね。

てながざる館無事にオープンしました。

それにしてもテナガザルには敬服しっぱなしでした。
旭山動物園のサル類の中では群を抜く運動能力を持つシロテテナガザルの,
檻に閉じこめられた能力を解放してあげよう!これが基本テーマなのですが,
「どんな?,どの程度の能力を持っているのか?」
それがなかなか読み切れないまま設計,建築と進みました。

本来の連続した動きをする前に檻に当たってしまうのです。

くわしく言うと紙面が足りないのですが,
チンパンジーとオランウータンとニホンザルの持つ運動要素,
能力を合わせ持ち,素早さ,反応速度,身体のバネ,
身軽さすべてがウルトラ級なのがテナガザルです。
今までの施設では決定的な失敗はなかったのですが,
心の中では「転けるならこの施設かも…」という気持ちがくすぶっていました。

新居に引っ越しオープン一週間前,いよいよ初の放飼場デビューです。

勢いよく放飼場に出た彼らの動きは目を見張るものがありました。
見事なブラキエーション(腕渡り)目では追えない程の素早い動き…
そして数分後にある出来事が起きました。

新施設はとても複雑な構造です。屋根のかかったエリア,オープンなエリア

そして来園者側に立つ遊具エリア,それぞれに意味があるのですが,
オープンなエリアでは壁面から屋外に出ないように
オーバーハングした屋根をかけていました。
 
1頭がオーバーハングの下,

地上約7メートルに設置した長さ40センチの鉄棒の上に
ちょこんと座りふと上を見上げました。
次の瞬間なんの躊躇(ちゅうちょ)もなく青空に向かってダイブ,
あり得ない体位で屋根に手をかけ屋根の上にあがりました。
しばらく景色を見渡し屋根の縁に両手でぶら下がり,
数メートル下に張ってあるロープに飛び降り,戻ってきました。

「新居はこうなっているんだ,なかなかいいね。ありがとう」と納得顔でした。

飛びつく先が見えない,力学的にあり得ないと思ってたのに…
スゲーとしか言いようがありませんでした。
彼らは数分で新施設の構造を理解し,自分の行動をイメージできたのです。
ヒトなんてたいしたことないな,つくづく感じました。
もちろん対策を行いオープンを向かえましたよ。

シロテテナガザル(ゲンちゃん画伯)