2009年12月31日木曜日

恩返しプロジェクト (平成21年12月)

今年最後の手紙ですね。
明るい話題でと考えていたのですが,訃報です。
ミナミシロサイのノシオが11月17日朝10時頃死亡してしまいました。
今年度は4月にオランウータンのモモが事故死,
6月にはアムールトラのいっちゃんのガンによる安楽殺など
まだ死ななくてもいい年齢の動物の死が続きました。
何とも晴れ晴れとしない年だった気がします。

昨年度来からの来園者数の減少傾向,

ベテラン飼育係が次々と退職を向かえ,
過去の本当に苦しかった時代を知らない世代に,

急激にバトンタッチしました。
動物慰霊碑の移動,僕はあまりげんを担いだりしないのですが,
開園42年目という年は何か節目のような,

抗しがたいものを感じさせられる年でした。
 開園以来多分,数千の,いやもしかしたら万の命が

この旭山で終わりをむかえています。
このたくさんの命は私たちが楽しむ,学ぶためだけ,の命として
終わらせてはいけないのだと思うようになりました。

動物園は所詮ヒトのエゴ,習性の産物です。
でも人類が地球上の生き物の運命を握ってしまった現状で,
私たちが他の生き物と共存する道を選択するために,
共に生きる生き物たちの生き方を知り

大切に思う心を育むために動物園は必要です。

でも,動物園で死を迎えた動物たちに動物園としてどう報いるのか?
飼育されている動物たちには野生での故郷があります。
仲間が暮らしています。
やはり動物たちの故郷に何か具体的に報いること,

恩返しをすることなのだと思います。

そういう意味で,今年は大きな一歩を踏み出すことができました。
旭山動物園「恩返しプロジェクト」第一弾として

ボルネオへの恩返しプロジェクトです。
日常の生活で欠かすことのできない必需品となった植物油脂パーム油,
その恩恵を受け続けることで

モモの故郷ボルネオの熱帯雨林が驚く程のスピードで消え続け,
アブラヤシの畑に変貌し続けています。
また建築資材としてボルネオの熱帯雨林の木を使ったコンパネなどの木材も
日本にとってなくてはならない必需品です。

私たちの日常の暮らしが,オランウータンやボルネオゾウの首を
真綿でじわじわと締め続けているのです。
窓の外に見える身近な山よりも,生活との関わりという点では
ボルネオはもっと身近な場所でもあるのです。

プロジェクトは旭山動物園が中心となり
現地に野生生物レスキューセンターを

設計し建築しようという途方もない計画です。
でも始めなければ可能性もありません。

旭山動物園は,動物園が進むべき方向を示す羅針盤の役割を目指します。
常に一歩先に…来年につなげていきたいと思います。
皆さんにとって来年がいい年でありますように。
ミナミシロサイの「ノシオ」(ゲンちゃん画伯)