2011年4月30日土曜日

新たな門出 (平成23年4月)

東北地方太平洋沖地震でお亡くなりになられた方々の
ご冥福をお祈りすると共に、
被災された方々に心からお見舞い申し上げます。

旭山動物園でも、震災に対しての義援金の募集箱の設置、
被災地の動物園水族館を支援するための
見舞金の募集の案内をしています。

被災地の動物園からは、職員の中に家がなくなってしまった方や
家族が行方不明の方がいる中、飼料や水、
燃料の欠乏という現実と立ち向かい
必死で飼育業務に当たる悲痛なメールが届いています。
命をあずかることの重さを改めて感じています。

日本動物園水族館協会の加盟園館が一丸となり
支援体制を整えています。
3月の18日に第一弾の支援が被災園に届きました。
同業者がそれぞれの分野で支援することも大切なことだと思います。

僕は地震の日、東京の上野動物園にいました。
ゾウ舎の建物の2階で
ゾウ舎の構造やゾウの多頭飼育について話し合っていました。
突然、経験したことのない揺れが襲いました。
正直足がすくみました。
でもすぐにテラスに出てゾウの様子を見ました。
いわゆるビビリ便をしていましたが意外と落ち着いていました。
プールの水はザブンザブンとあふれ、
お客さんは地面にしゃがみ込んでいました。
倒壊する危険がある建物などが近くにないためか、
皆落ち着いて行動していました。

その後、何回かの大きな余震があり
「これは帰れないかも」との思いがよぎりました。
上野動物園に被害はなく、電車が全部止まっていましたが、
歩いても1時間くらいの所に予約したホテルがあることが分かり、
歩くことにしました。

人人人…、黙々と歩く人、談笑しながら歩く人、バス停には長蛇の列、
でもなぜか緊張感がありません。
たくましいなと思う反面、東京は容量オーバーだと感じました。

東京に行くと数日で気疲れしますが、
人が多いこともそうですが、見渡す限り道路と歩道とビル以外、
畑や田んぼといった生活の基盤が何もない景色が
気持ちが落ち着かない原因だと気づきました。

地に足がついていない、どこか現実離れした環境が、
多少のことでは動じないたくましさを生んでいるのかも知れません。

今後数年は、旭川が旭山動物園がなんて言っている場合ではないでしょう。
一刻も早く日本中が平穏になれるよう頑張らなくてはなりません。
でもその先の未来につながることもあきらめずに
しっかりと継続していなければいけないでしょう。
今年の4月はあらゆる意味で新たな門出です。