2005年1月29日土曜日

ペンギン散歩の裏話(平成17年1月)

「一年の計は元旦にあり」皆さんは何を誓ったでしょうか?
僕は「あざらし館」みたいな大技はないけどマニアックに「おっ!」またやってるね!
と思われるような充実の年にしたいなと思います。
昨年は実力以上の期待を皆さんに抱かせてしまったので、
本当の実力を蓄えないとボロが出てしまいますから。

毎年走り続けるのもけっこうしんどいんですけど、
ここまで来たらどこまで行けるかチャレンジするのが運命なのかなと思います。
小技、中技?の第一弾がオランウータン館です。
予算が付けば第2弾も考えています。

今年は酉年ですね。
一昨年はこども牧場でウマとヒツジが隣同士にいたので、
一枚の写真に収まり「行く年、来る年」みたいでした。
来年はニワトリとイヌが一緒にいるので、
また「行く年、来る年」ができそうです。
うちは干支展みたいなことはやりませんが、鳥はたくさんいます。

すっかり冬の風物詩になったキングペンギンの散歩、
一昨年生まれのNo.16がまだ一緒に散歩に行きません。
初日みんなが出て行ったので、
とりあえず「待ってよ、どこ行くの」とばかりについては来たのですが、
途中で「僕(私)は何をしているんだ」と端と気づいたかのように立ち止まり、
ガンとして動かなくなりました。
おいて行くわけにもいかず、抱えてぺんぎん館に戻しました。

それ以来、昨年生まれのまだ茶色いヒナと一緒に留守番をしています。
そしてどうしてそんな行動をするのか解明していないのですが、
親ペンギンが散歩でいなくなるとNo16はしつこくヒナをつついたり乗っかったりするのです。
一見いじめているように見えるのですが、
どうも可愛さ余って…のようで愛情の表現のように見えます。
野生では同じ年に巣立った雛たちと行動を共にしている年齢です。
一羽で巣立ち仲間がいないからなのかもしれません。

ジェンツーペンギンもフンボルトペンギンも1羽ずつしか育たなかったので、
一羽でポツンとたたずんでいる時間が長く見られます。
そんな姿を見ていると、今年こそは複数の繁殖を成功させ
同年代の仲間で過ごせるようにしてやりたいと思います。

年末年始も取材、取材です。

今年もとにかく頑張るぞっと!
キングペンギン

画:ゲンちゃん

2004年12月29日水曜日

動物園からのお年玉(平成16年12月)

さて冬期開園が始まりました。
やはり昨年の倍以上のペースで来園者が増えています。
でも多いと言ってもあざらし館に行列ができるほどではないので
足が遠のいている方ぜひ来て下さい。

僕は小樽に住んでいたのですが
運河の再開発が行われる前はとても住みやすくて大好きでした。
運河がきれいになって北一ガラスがメジャーになって
観光客が大量に押し寄せて急激に町が変わってしまいました。

町の活性化はうまくいったのでしょうが、
地元の人たちは決して手放しでは喜べなかったのです。
今の旭山動物園どこか似ているような気がします。
旭川の自慢になるには、
地元の人にこそたくさん来てもらえるようにしなくてはいけませんよね。
経済的な面からや驚異の成功例みたいにとらえられることが多いのですが、
僕たちの本来の目標はそれではないのですから。

実は今12月末完成を目指して
寄附でいただいたお金で
オランウータンの室内展示場とトイレを建築しています。
工期が短いこともあり超難工事になっていますが、
「旭山らしい」できばえになりそうな手応えを感じています。

形ができてきて「自分がまず遊んでみたい!」と思えたから。
もちろん冬期間も見ることができる施設です。
同じ年度内に2つも新しい動物舎ができるなんて初めてのことです。
「オランウータンは地面のない樹上で生活している動物なんだ」がテーマです。
ジャックがリアンがモモがここでどのような秘められた能力を
開花させてくれるのか楽しみです。
一月中旬にはお披露目できそうです。
楽しみにと大きな声で言いたいところですが、雪が積もると駐車場が…。
「来て下さいって言っておいて,受け入れ態勢ができてないじゃない!」
とまた叱られてしまいそうですね。

そう言えばもう年末年始なんですね。
ウータン舎は動物園から皆さんへのお年玉になるのでしょうか、
「期待以上」になるといいなと思います。

皆さんよいお年を。
オランウータンのジャック

画:ゲンちゃん

2004年11月29日月曜日

動物園はなぜ必要なの?(平成16年11月)

想像もつかないことの連続の夏期開園が終わりました。
122万人という数字は正直とんでもない数字でした。
冬期開園はどうなるんでしょう?

9月19日にホッキョクグマのカンゾーが死亡しました。
ほっきょくぐま館のオープンに合わせて来園した個体でした。
高齢でしたが、立派な体格で
これぞホッキョクグマという威厳のある容姿をしていました。

実はカンゾーの名前の由来は性格がきかないので
「きカンゾー」でもあったのですが、
来園時からの血液検査で肝臓の機能が低下していての
「カンゾー」でもあったのです。
飼育下では飛び抜けて高齢だった個体なので、
漢方薬などの肝機能改善薬を常用してきました。
僕たちの中ではいつ逝ってもという覚悟はできていました。
8月の夜の動物園から体調を崩し、
肝機能に加え腎機能も著しく低下し始めました。
動物園で飼育していても野生動物です。
人に触られる、吹き矢で麻酔をされることは何よりも苦痛です。
老衰で治癒の見込みがないと判断したので、
最後に苦痛だけを与えて最後を迎えさせることは避け、
無理な治療はしませんでした。
 
ホッキョクグマは野生下では2万頭前後の生息と推定されています。
当園の連休の中日の入園者数です。
地球上にこれだけです。
緊急に絶滅の心配はないとされていて、
輸出国の許可さえあれば輸入することは可能です。
しかし特に日本には輸出国の許可がおりません。
その理由は本来の生息地から
わざわざ持ち出すことをしない方針もあるのですが、
日本は動物を見せ物にして、ろくに繁殖もさせずに「消費」しているとの
痛烈な批判があるからです。
日本に輸出することへの国民の理解が得られないのです。

しかし、なぜ日本でホッキョクグマを展示しなければならないのでしょうか?
もっといえば動物園はなぜ必要なのでしょうか?
そのことを真剣に考え反省しないと
日本の動物園の将来は見えてこない気がします。 
カンゾーがいなくって、
アザラシ目線のカプセルのある放飼場にはコユキ1頭になりました。
元来クマは単独生活なので
カンゾーがいなくなってもコユキはケロッとしています。
でも展示効果としてはピンチです。
コユキもおばあちゃんでカプセルから人が顔を出しても知らん顔です。
でも心配はご無用です。
ちゃんと新しいニューフェイスが来園しました。
今いるハッピーの姪にあたるルルです。
旭山の血筋です。
若いので将来を考えてイワンと一緒にしようと考えています。
そしてハッピーをコユキの放飼場に馴らしていこうと思います。

この手紙の頃にはお披露目されているかな?

ホッキョクグマのイワン

画:ゲンちゃん