2005年2月27日日曜日

オランウータンとの知恵比べ(平成17年2月)

さてペンギンの散歩もすっかり定着した感があるのですが、
16もみんなと一緒に歩くようになりました。
今年はなんと気が向いたことか、茶色のヒナまで一緒に散歩しています。
ヒナは留守番をするのが習性なハズなのですが…説明に困ってしまいます。

「おらんうーたん館」もどうにか無事にオープンしました。
無事にというのは、建物の構造上オランウータンが興味を持ちそうだけど、
そこに興味を持たれて壊されては困るという箇所があったからです。
オスのジャックはたとえるなら「握力400㎏の幼稚園児!」みたいに好奇心が強く、
しかも破壊が大好きです。
さらに執念深さは・・・なみです。
設計の段階から知恵比べだったのですが、
具体的にはコンクリートパネルの継ぎ目に興味を持ち破壊されること、
天井のパネルを押さえているビスをとられること、
下に降りられること等々でした。
先の二つは脱走につながり、最後のは「地面のない展示」に関わります。
もしも…その情景を思い浮かべただけで卒倒してしまいそうです。
継ぎ目に関してはできるだけ継ぎ目の幅が狭くなるように、
天井のビスについてはナットを締めるとねじ山が壊れるロックナットを使い、下
に降りられたらには、コンクリートの縁に傾斜をつけ手がかからないようにしました。


はじめてオランウータンを放飼場に出した日。
メスのリアンが、僕らの見落とした「道具」を見つけて
パネルの継ぎ目をテコの要領でほじり始めました。
また、ジャックが、天井のビスをいじり始めました。
ビスははずれないのですが…、ジャックが下に降りてしまいました。
見事にこちらが気にしている箇所を、致命的ではないにしろ真っ先にやられてしまい、
僕の知恵はジャックを超えられなかったのか?
また、僕が気づいていない彼らが破壊したくなる場所があるかもしれない、
そんな思いが頭を渦巻きました。
まぁ、なるようになるさと開き直り、いろいろ対策をしてオープンとなりました。
後は数カ所改良すればもっとオランウータンの動きを引き出せるし、
ハンモックにいるようになってくれれば、僕的には満足だと思っていました。
が!まさに、この原稿を書いている最中に無線が鳴りました
「ハンモックの編み込みロープがはずされました・・・」
ロープが垂れ下がるなんてあってはならないことです。
想定外です!
いい加減にしてくれ、と言いたいです。
これはいじめだ!
でもオランウータンは楽しそうにしているのは確かなのでよしとしますか?

ジャック

画:ゲンちゃん

2005年1月29日土曜日

ペンギン散歩の裏話(平成17年1月)

「一年の計は元旦にあり」皆さんは何を誓ったでしょうか?
僕は「あざらし館」みたいな大技はないけどマニアックに「おっ!」またやってるね!
と思われるような充実の年にしたいなと思います。
昨年は実力以上の期待を皆さんに抱かせてしまったので、
本当の実力を蓄えないとボロが出てしまいますから。

毎年走り続けるのもけっこうしんどいんですけど、
ここまで来たらどこまで行けるかチャレンジするのが運命なのかなと思います。
小技、中技?の第一弾がオランウータン館です。
予算が付けば第2弾も考えています。

今年は酉年ですね。
一昨年はこども牧場でウマとヒツジが隣同士にいたので、
一枚の写真に収まり「行く年、来る年」みたいでした。
来年はニワトリとイヌが一緒にいるので、
また「行く年、来る年」ができそうです。
うちは干支展みたいなことはやりませんが、鳥はたくさんいます。

すっかり冬の風物詩になったキングペンギンの散歩、
一昨年生まれのNo.16がまだ一緒に散歩に行きません。
初日みんなが出て行ったので、
とりあえず「待ってよ、どこ行くの」とばかりについては来たのですが、
途中で「僕(私)は何をしているんだ」と端と気づいたかのように立ち止まり、
ガンとして動かなくなりました。
おいて行くわけにもいかず、抱えてぺんぎん館に戻しました。

それ以来、昨年生まれのまだ茶色いヒナと一緒に留守番をしています。
そしてどうしてそんな行動をするのか解明していないのですが、
親ペンギンが散歩でいなくなるとNo16はしつこくヒナをつついたり乗っかったりするのです。
一見いじめているように見えるのですが、
どうも可愛さ余って…のようで愛情の表現のように見えます。
野生では同じ年に巣立った雛たちと行動を共にしている年齢です。
一羽で巣立ち仲間がいないからなのかもしれません。

ジェンツーペンギンもフンボルトペンギンも1羽ずつしか育たなかったので、
一羽でポツンとたたずんでいる時間が長く見られます。
そんな姿を見ていると、今年こそは複数の繁殖を成功させ
同年代の仲間で過ごせるようにしてやりたいと思います。

年末年始も取材、取材です。

今年もとにかく頑張るぞっと!
キングペンギン

画:ゲンちゃん

2004年12月29日水曜日

動物園からのお年玉(平成16年12月)

さて冬期開園が始まりました。
やはり昨年の倍以上のペースで来園者が増えています。
でも多いと言ってもあざらし館に行列ができるほどではないので
足が遠のいている方ぜひ来て下さい。

僕は小樽に住んでいたのですが
運河の再開発が行われる前はとても住みやすくて大好きでした。
運河がきれいになって北一ガラスがメジャーになって
観光客が大量に押し寄せて急激に町が変わってしまいました。

町の活性化はうまくいったのでしょうが、
地元の人たちは決して手放しでは喜べなかったのです。
今の旭山動物園どこか似ているような気がします。
旭川の自慢になるには、
地元の人にこそたくさん来てもらえるようにしなくてはいけませんよね。
経済的な面からや驚異の成功例みたいにとらえられることが多いのですが、
僕たちの本来の目標はそれではないのですから。

実は今12月末完成を目指して
寄附でいただいたお金で
オランウータンの室内展示場とトイレを建築しています。
工期が短いこともあり超難工事になっていますが、
「旭山らしい」できばえになりそうな手応えを感じています。

形ができてきて「自分がまず遊んでみたい!」と思えたから。
もちろん冬期間も見ることができる施設です。
同じ年度内に2つも新しい動物舎ができるなんて初めてのことです。
「オランウータンは地面のない樹上で生活している動物なんだ」がテーマです。
ジャックがリアンがモモがここでどのような秘められた能力を
開花させてくれるのか楽しみです。
一月中旬にはお披露目できそうです。
楽しみにと大きな声で言いたいところですが、雪が積もると駐車場が…。
「来て下さいって言っておいて,受け入れ態勢ができてないじゃない!」
とまた叱られてしまいそうですね。

そう言えばもう年末年始なんですね。
ウータン舎は動物園から皆さんへのお年玉になるのでしょうか、
「期待以上」になるといいなと思います。

皆さんよいお年を。
オランウータンのジャック

画:ゲンちゃん