2010年5月30日日曜日

夏期開園日 (平成22年5月)

更新が一ヶ月遅れになってしまいました…すみません…。
コレは4月に書いたものです。

今年は4月に入っても暖かい日が続かず、残雪も多い年です。
やはり温暖化と言うよりは気候変動という言葉のほうが
より的確な気がします。
しかも小春日和かと思えば夜には雪が舞うみたいな、
乱暴な天気の日が多くなっています。
夏期開園の29日は小春日和になればいいな、なんて祈りつつ
夏期開園準備におわれる日々です。

それぞれが担当動物舎のリニューアルに工夫を凝らします。
それは飼育動物がよりその動物らしく過ごすための環境づくりであり、
そのことはイコール来園者にも
より感動を持って動物を見てもらうための工夫でもあります。
どこが変わったのかはご自分の目で確かめてくださいね。
我々の試行錯誤の工夫を楽しんでいただけたら、
それは同時に僕たちと共により深く動物を知る道のりにつながるはずです。

気候変動と言いましたが、今年はキングペンギンが4月に産卵しました。
例年より一ヶ月近く早い産卵です。
キングペンギンは繁殖期の前に一年に一度の換羽をするのですが、
その換羽も今年は早く訪れました。
その影響でペンギンの散歩も3月から一日一回にしていました。
卵は有精卵で孵化を期待しているのですが、
なぜ今年繁殖期が早く訪れたのかは、
これといった原因は見あたらず解明していません。

キョンとテナガザルの共生展示にも取り組んでいます。
来園したキョンはヒトに対してはとても臆病で神経質な反応をするために、
テナガザルとの同居もハードルが高いなと慎重に準備をしてきました。
室内展示場で同居を開始したのですが、ヒトに対する反応とはまったく異なり、
テナガザルに対しては怯えたり逃げたりといった反応を一切しませんでした。

テナガザルの一頭がキョンに興味を持ち恐る恐る触りだし、
それが蹴る、叩く、掴むとエスカレートしていったのですが、
キョンはいたって冷静で受け手流すような反応でした。
相手の本質的な能力や、
自分に対しての関心の質等を瞬間的に読んでいるようでした。
凄いもんだなと感心してしまいました。
仲よくではない共生の原点を見たような気がしました。
担当者の努力もあり順調に開園を迎えられそうなめどが立ちました。

今年は旭川近郊の方が足を運びたくなるように
たくさんの情報を発信していきたいと考えています。
キョン(ゲンちゃん画伯)

2010年4月30日金曜日

共に暮らす未来 (平成22年4月)

今は春の閉園期間中。
毎年何でこんなに手直しするところがあるんだろう?
と思うくらい舗装や器械類の修理などが目白押しです。

今年はホッと一休みができるようにベンチの大増設をします。
トイレ不足解消のためにさる山前に水洗トイレも作りました。
日陰の増設にも取り組みます。
どう変わったのか、今年こそは「混んでるからね」
といわずに皆さん確認しに来て下さい。
そしてもっとこうした方がいいよと意見を下さい。

今年は市民や道北圏の方々に足を運んでもらえるように
頑張っていきたいと思います。
やはり見続けることから、命の大切さを実感でき、
さまざまな生き物と共存する価値観は生まれてくるのだと思うからです。

今年度の始まりは、もうきん舎のオープンから始まります。
じつはこれシマフクロウ舎として整備した施設です。
シマフクロウは現在動物園としては
釧路市動物園のみで飼育し繁殖に取り組んでいます。
一カ所での飼育は感染症などが発生した場合に
全滅の危険があるために、将来飼育地を分散していく方向です。
もちろんいつになるかは分かりません。

しかしその時になって受け入れる施設がなければ
受け入れることもできません。
そのための準備です。
巣箱も釧路スタンダードで準備してあります。
そこにオジロワシなのです。
少し違いはあるのですが北海道の豊かさの頂点にある動物であること、
魚食性が強いことで一致します。 

あざらし館から始まり、絶滅させたオオカミの森、
有害獣と呼ばれるエゾシカの森と
北海道の生き物たちの施設の整備をおこなってきました。
オジロワシも特に冬期間は旭川でもなじみの深い鳥類ですね。
駆除し放置されたエゾシカを食べ
駆除に使った鉛弾も一緒に食べてしまうことで
鉛中毒が大きな問題になったことは
多くの方が知っているのではないでしょうか。

新年度は、さらにタンチョウ舎を新設し、
現在のは虫類舎を北海道産の両生類・は虫類舎に改修します。
地味だと思われるかも知れませんが、
共に生きている生き物の生き方を知らないと
共に暮らす未来を考えることはできませんから…。

皆さん30年後の北海道をテーマに絵を頭の中で描いてみてください。
どんな動物たちがいますか?
僕は少なくとも現存する動物たちにはすべていて欲しいと思います。
そんな未来を選択する北海道でありたいとの願いをこめました。
オジロワシ(ゲンちゃん画伯)

2010年3月31日水曜日

”いのち”を繋ぐ (平成22年3月)

毎度のことながら、あっという間に2月です。

オオカミに発情が来て2頭の仲は急接近かと思えば変によそよそしかったり、
駆け引きが続いています。
お互いが認め合って始めてペアの誕生なのですが、やきもきします。

レッサーパンダも恋の季節を迎え、交尾も確認できました。
どちらも年一回の恋の季節です。
出産を期待しながら春を待つのはいいものですね。

ホッキョクグマのサツキが円山動物園からやってきました。
サツキはおびひろ動物園で長い期間、1頭で飼育されていたのですが、
繁殖を期待し円山動物園に移動しました。
デナリとの繁殖を期待したのです。

ところが一昨年、昨年と同居を試みたのですが、
サツキが怯えてデナリとの同居は成功しませんでした。
デナリもサツキに対しての関心は高くなかったようです。

ホッキョクグマは雌に発情が来ると、強引に交尾をします。
恋の駆け引きなんてないといってもいいでしょう。
北極の大氷原で雄と雌が出会う機会は多くはなく、
生きることに精一杯な中では駆け引きなどしている余裕はないのでしょう。
寒さはあらゆることを先鋭化します。
サツキは雌としての発情がはっきりとしない個体なのかも知れません。

サツキは18才です。
繁殖経験がないことを考慮すると
繁殖の可能性という点ではあと数年でしょうか。
イワンとサツキの繁殖に成功すれば新たな血統が生まれます。

現在順調に繁殖している円山のデナリとララですが、
ララと旭山のルルは姉妹です。
釧路のクルミがデナリとの子を産んでも、イワンとルルに子ができても、
北海道内ではすべて血縁関係になり、
将来につながるペアーをつくることはできません。
サツキに可能性がある限りその可能性に賭けようと
今回の移動が決まりました。

サツキはとても順応性の高い個体で
旭山の環境にもすんなりと馴染みました。
一般的には4月に発情が来る可能性が高いので、
イワンとの同居に備え準備を整えています。

命を繋ぐことは自然界でも飼育下でも何よりも大切なことなのです。
ホッキョクグマの血縁関係(ゲンちゃん画伯)