2001年1月30日火曜日

毛虫 (平成13年1月)

さて,今年は蛇年ですね。
みなさんの嫌いなヘビですね。
年賀状のデザインも苦労したのではないでしょうか。

どうも,手足のないヘビやミミズ,
手足の数が異常に多いムカデや毛深いクモやケムシは
生理的に嫌われる傾向があるようです。
ケムシなんか手足もないように見えますから究極ですね。
ただし,毛深いのが嫌われるのは
性的な感覚が関与するからだって言われてますけどね。
僕はケムシが気絶するほどダメなのですが,
これは生理的というより昔の経験がそうさせています。
小さい頃は毛虫をたくさん捕まえて砂に埋め,
誰が一番先に出てくるかなんて遊んでいました。
ケムシは好きな方でした。

子供の頃,学校の帰りに垣根の葉をむしって,
手でもみつぶしたりして歩きますよね。
その時「なんかネチョネチョするな」
とふと手を見たらケムシがつぶれていたのです。
ぶっ倒れそうになりました。
これが2回もあったのです。
さらに,父親と虫取りで山道を歩いていて,
ふと目の前に巨大なケムシを発見し,
前に進めなくなったら,父親が「男のくせに情けない」と,
あろう事かそのケムシを虫かごに入れて歩かされたのです。
一生,ケムシアレルギーから
開放されることはないと断言できる体験ですよね。
ちなみに毛のないアゲハの幼虫なんかは平気で,
むしろ可愛いくらいです。

さて,ヘビが嫌いなあなた,何かいやな体験をしましたか?
きっと実物のヘビすら見たこともないのに
嫌いな人が多いのではないでしょうか?
実は,サルの仲間は特に高等になるほど
本能的にヘビが嫌いなみたいです。
チンパンジーはアオダイショウが
放飼場の外を這っているだけで大騒ぎです。
テナガザルもそうです。
ゴリラなんか放飼場の中に入ろうものなら逃げ回っていました。
別に,いやな体験があるわけでもないのに,怖がる理由もないのに
異常なまでの反応をするのです。

はるか昔,僕らの祖先がネズミのような生き物だった頃,
ヘビや爬虫類は天敵でした。
そのころの記憶がインプットされて受け継がれ
本能的にヘビは嫌いなのかもしれません。
だけど,触ってみるとなんだけっこうツルツルして気持ちいいじゃんとなると,
可愛いかもとなります。
さすがヒト,学習ですね。

そういえばもう一つ,類人猿は金槌です。
泳げません。金槌の人,安心してください。
動物には珍しく,もともとは泳げないのです。
人はもともと泳げると言って,
赤ちゃんが水中で目を開けて泳いでいるテレビを見たことありますが,
あれってそのままにしておいたら息継ぎできなくて死んじゃいますよね。

今年は蛇年,こども牧場でヘビを触って,サルからヒトに進化してください。

2000年9月30日土曜日

10年20年ぶりの動物園(平成12年晩秋)

今年も10月22日で通常の開園が終わり、
今は冬囲いや、建物の補修などで大忙しです。

ぺんぎん館がオープンしてからは記録的な入園者数で、
特に土日は大変で「もっとゆっくり見たかった。」
との声が多く聞かれどうしようもないのですが、
ご迷惑をおかけしました。
換羽や腕輪の情報の不備など、
お客さんの疑問に答える情報も足りなかったり、
小さなお子さんがペンギンを見る踏み台が少なかったりと
反省点がありました。
また出口から入られるお客さんへ
不愉快な対応があったのも反省点です。

来園者の中には、10年、20年ぶりに動物園に来たという方がとても多く、
その人の中の旭山動物園のイメージはそのころのままで、
「ゴリラはどうした?」「片手のシロクマはどうした?」
などの質問が多く聞かれ、
タイムスリップしたようで可笑しかったです。
動物園はこどものための施設ではないと思っているので、
ぺんぎん館をきっかけに「動物園もいいな、また行こうか。」
と感じていただければこんなにうれしいことはありません。
みなさんいかがでしたか?

ペンギンたちは僕が思っていたより新居の馴れるのが早く、
特にジェンツーペンギンは、みんな冷房完備の室内生まれ、
室内育ちだったので、トンボを見ては大はしゃぎ、
太陽の日を浴びて日向ぼっこ、室内は冷房完備で
屋外でも室内でもペンギンが自由に出入り出来るようにしているのですが、
ほとんど屋外で過ごしています。

こないだ初雪が降ったときは、
無数に降ってくる雪を次から次に「捕まえて」いて、
「疲れるだろう、おまえ…」と思ってしまいました。
 恋の季節を迎えあちこちでラブラブなペアーが出来つつあるのですが、
三角関係が多く、さてこの後どうなっていくのでしょう。
ジェンツーペンギンは巣作りも始めているのですが、
雪が降ったら雪を捕まえに行かなきゃならないし、
どうも集中力がありません。

ペンギンは陸上に天敵のいないところで進化した鳥です。
水中を「飛ぶ」ためにたくさんの機能を犠牲に出来たのでしょう。
陸上でのヨチヨチはそのためです。
好奇心が強く、警戒心が弱いかと思えば、変なところで神経質だったり、
飼育してみると今まで飼育してきた鳥とは全く異質なので、
楽しんで飼育しています。
動物の能力を展示することが
動物にも見る側にも気持ちいいぺんぎん館は、
けっこううまくいったかなとちょっと満足です。
雪の中のペンギンも見に来てくださいね。

ジェンツーペンギン

画:ゲンちゃん

2000年9月15日金曜日

ぺんぎん館!いよいよオープンだ(平成12年秋)

さて、ぺんぎん館の完成もいよいよカウントダウンです。
9月10日のオープンを目指して
建築業者の方もみんな頑張ってくれています。
きっとこの号が出る頃には、トンネルプールの水張り試験をしています。
試験とは言っても、一発勝負なので漏水はあり得ないのです。
すべてがまったなしなのです。

8月31日完成。
9月1日第一陣のペンギン引っ越し、第二陣のペンギン入園。
9月4日第二陣のペンギン引っ越し。
9月10日までにぺんぎん館に馴らし、
僕たちも潜水してのペンギンガイドに馴れるという、
半分やけくそなだけど大丈夫なスケジュールです。

7月19日に8羽のジェンツーペンギンを
名古屋港水族館から購入しました。
夏場の動物輸送はめったに行わないのですが、
オープンに間に合わせたいことやいろんな事情でこの日になりました。
あらかじめ輸送箱とクーラーボックス用の保冷材を先方に送りました。
実験で気温30℃で箱の底の温度が24℃と高かったので、
さらに保冷材を送りました。
何せ、生まれも育ちも0℃のペンギンたちです。

7月18日ペンギン受け取りのため、千歳から名古屋に向かいました。
名古屋に着いた瞬間立ちくらみがしました。
ただの暑さじゃないのです。
ここはサウナかと思っちゃいました。
名古屋港水族館に着く頃にはへとへとです。
輸送の打ち合わせなどを行い増強した保冷材の効果を実験しました。
夕方気温34℃保冷材を底に引き詰め、壁と網の天井にも付けました。
箱の底が17℃、上の方でも23℃とこれならOKの温度になりました。
その日の晩はエアコンが寒いくらい効いたホテルで益々具合が悪くなり、
有料チャンネルを見る元気もなく寝ました。

19日快晴、予想最高気温36℃。
朝8時からペンギンの箱取り開始。
9時に保冷車で空港に向かいました。
運転手さんが名古屋の夏は最悪だ、住む所じゃないよ、と笑っていたけど…
ほんと10日も居たら入院だと思いました。

飛行機は11時25分発旭川行きのANAです。
通常貨物は出発の1時間前に引き渡すのですが、
10時40分まで保冷車で待機させてくれました。
さらに万が一のために用意した氷の袋も積めるようにと
急きょコンテナにビニールを敷いてくれました。
10時50分コンテナに収容、
ペンギンに異常がないのを確認し急いで搭乗手続きをしました。
ジェンツーペンギンは、
現在世界中で名古屋港水族館からしか入手出来ません。
しかも好意で譲り受けたペンギンたちです。
旭川でも到着後一番で降ろしてくれました。
無事到着。みんな元気です。
オープン前の最大の山場を無事超えました。

ただ、一つとても気になることを聞いてきました。
水中で作業してると、
ペンギンが耳や髪の毛や機材を突っついたり引っ張ったりするから
気をつけなさいと言われました。
一度おでこにくちばしから体当たりされ
気絶しそうになったとも言っていました。
水中で給餌しながらのガイド・・・
オープンの日「飼育係、水中で血まみれ」
なんてならないことを祈らずにはいれません。
僕はオープンの日は潜らないゾっと!

ジェンツーペンギン

画:ゲンちゃん