2009年1月7日水曜日

動物の行動解説 (平成21年1月特別号)

さて、新たな年を迎えたことだし、
何かしたいな~と思い立ったのがゲンちゃん日記特別号です。
動物たちの特徴的な行動などを映像を交えて紹介しようと思います。

第一回は、レッサーパンダです。
正月の誰もいない閉園期間だから撮れた映像を紹介します。

その映像をまずご覧ください。動画はこちら。

レッサーパンダは飼育していて、抜群におっとりとした動物です。
ジェンツーペンギンにつうじるものがあり、
警戒心よりも好奇心の方が勝ってしまう習性があります。
これは野生の生息地での捕食圧が低いこと、
あるいは安全な生活圏を持っていることを反映しています。
飼育下生まれでも特別な調教などを行わない限り、
本来の習性は失われることはありません。

ただし、いざとなれば当然威嚇や攻撃をします。
レッサーパンダの武器はとても鋭い爪とまぁまぁ強力な歯です。
この動画の行動はレッサーパンダ得意の威嚇行動です。
レッサーパンダ同士でもじゃれながらよくやっています。
他にもネコのように半身になって毛を逆立てるパターンもあります。
凌凌(リンリン)はモートに降りる常習犯です。
モートに降りるとイヤな思いをすることを学習させようと、
凌凌(リンリン)を威嚇してみました。
ところが凌凌(リンリン)もやるもので僕に挑みかかってきました。
ネコパンチならぬレッサーパンチです。
僕の威嚇攻撃は彼には効かなかったようです。
それにしても不思議なヤツですネ。

 関連リンク:好奇心(平成20年1月)
レッサーパンダ(ゲンちゃん画伯)

2009年1月3日土曜日

新年のごあいさつ (平成21年1月3日)

みなさま あけましておめでとうございます。
今年は何が起こるのかわからない、見通しのきかない年になりそうですね。
どっちかと言えば暗い年になりそうですが、
いろんな意味で、これからの未来に向かった
新たな価値観や仕組みの構築が始まる年になるのでしょう。
まぁ考え方を変えれば激動のまっただ中を体験できるし、
自分たちが主役にもなれる可能性があるともいえるでしょう。
 
今の社会は明らかに「個」の時代です。
個の権利がとても強く主張され、僕には「これでいいの?」
と思えることが多くあります。
個はとても大切ですが、全体があって初めて個として存在できます。
全体があること、つまり社会や国があることの意味を
今一度しっかりと考えないといけない気がします。
ヒトは飛び抜けたコミュニケーション能力を持ち、
異常ともいえる密度で生活をする仕組みを作り上げてきました。
 
僕は東京など都会に出張に行くと違和感を感じることがあります。
山手線に乗ると(これしか乗れない(^_^;))隣や向いの人が
あたかも周りに誰もいないかのように振る舞っています。
携帯やゲーム機をいじっている人、化粧をなおしている人、
本を読んでいる人…
自分一人の部屋にいるかのような表情をしています。
目があっても人を見ている目ではなく
ポスターか何かを見ているように感じます。
確かにあの雑踏の中にいると人として意識していては
とてもじゃないけどやっていけない気はします
(田舎ものの僕は人人人…に見えるので
都会への出張は精神的にとても疲れる)。

関わりを持たないこと、いやなところは見ない、
都合のいいところだけ関わることで
集団生活が維持される方向にあるようです。
もはや社会ではなく集団です。
 
動物園も当然、時代や社会を反映する一面を持っています。
各地の動物園で個体のスターが誕生しているのも
時代を反映しているといえるでしょう。
一方で地球規模での気候変動や環境破壊などの問題解決が
急務となっていて、生物多様性、保全といった言葉を
頻繁に耳にするようになりました。

この言葉の意味するところは、もはや個体を保護、愛護する視点では
問題を解決できない段階に来ていて、
全体の仕組みそのものを守っていかなければいけないという視点に立った
方向性を示しています。
擬人的な興味から生まれた個体のスターから野生動物、環境の保全、
共生の感覚は非常に生まれにくいのではないかと思います。

旭山動物園は、それぞれの動物らしい命の営みを
淡々と伝え続けていきたいと思います。
その理念をとおして、
動物園が存在するからこそできることを具体的な形にしていく
スタートの年にしたいと考えています。

今年もみなさまにとってよい年でありますように。
09新年(ゲンちゃん画伯)

2008年12月31日水曜日

命の恵み (平成20年12月)

冬期開園も無事に始まりました。
どうなるか分からないのですがホッキョクグマのルルの出産準備も整いました。
オオカミも新しい雌がカナダからやってきます。
10年後20年後を考えて

世代交代ができるような群れを形成していきたいと考えてのことです。
ケンとメリーが若い内ならば,新参者を迎え入れてくれるでしょう。
オオカミの繁殖にも僕たちは期待しています。
発情期は年に一回2月頃です。
守るべき命が誕生することで,よりオオカミらしく生活をするようになるでしょう。
順調にいくと来春には…楽しみですね。

今年の冬の足音は順調ですね。
(広報を書いたのが11月だったので…。12月はなかなか雪が降りませんが…)
冬の使者,ハクチョウなどの水鳥類も渡ってきました。
高病原性鳥インフルエンザの問題が発端となり,
餌付けの自粛への取り組みが各地で始まっています。
野生動物との本来の関係を取り戻すことに

関心が向いてくれればいいのですが。
旭山動物園でもスタッフが中心メンバーとなり

永山新川での餌付け問題に取り組んでおり,
着実に成果を上げつつあります。

ただし感染症を怖がるだけで

日本中が一斉に餌付けをやめてしまうことには不安もあります。
彼らが越冬する場所も人と関わらずに確保できる餌場も

当然ながら不足しているはずです。
科学的な検証をしながら,彼らから奪ったものを補ってやるという発想も
一方でしっかりと検討していかなければいけないでしょう。
高病原性鳥インフルエンザは不自然で濃密な接点を持たなければ,
必要以上に恐れる必要はないのです。

このことは国民共通の理解にしておきたいものです。

弱っていたり傷ついたハクチョウを見つけると

「助けてあげたい」と誰もが思います。
ごく自然な感情です。
でも動物たちからするとどうでしょう?
厳しい冬を迎える前のキタキツネや大型の猛禽類などにとっては
ハクチョウはシベリアの大地からの大切な恵みです。
過酷な渡りの過程で年老いたものや体力のないもの傷ついたものは

脱落し死亡していきます。
ハクチョウにとっても自分たちだけが増えすぎないための大切な営みです。
死はすべて恵みになります。
日本の大地の恵みで命をつないだハクチョウたちは

春その恵みをシベリアの大地に運びます。
すべての営み,命は循環しています。
今守らなければならないのは,個ではなく仕組みそのものです。

それが「保全」です。

僕たちの住む日本や先進国,急速な発展をしている国は
食べ物やエネルギーや木材を大量に輸入しています。
そして国内で消費し尽くして,恵みをくれた大地に何も返していません。
地球環境が病んでいる大きな原因の一つです。
ハクチョウを見習い循環する仕組みを作り出さなければいけないですね。
渡るコハクチョウ(ゲンチャン画伯)