2015年8月17日月曜日

気付かぬうちに出産したレッサーパンダ (平成27年8月)

今は7月の中旬ですが
きっとあっという間に夜の動物園を迎えることでしょう。
先日天売島に泳ぎに…ではなくて、野良猫の状況や、
海鳥やアザラシに会いに行ってきました。

もう10年近く毎年訪れているのですが、
毎年新鮮で、つくづく奇跡のような島だなと思います。
100万羽近いと言われる海鳥たちの営みが
これからもずっと続いて欲しいと願わずにはいれませんでした。
元気をもらいました。

旭山動物園にいる天売野良ネコも少しずつヒトに心を開いてきています。
ヒトと野生動物そしてその間で翻弄される家畜種のネコ、働くネコ、愛玩のネコ…
いろいろと考えさせられます。 

さて、6月26日に生まれた
レッサーパンダのユーユーの子は順調に成長しています。
ユーユーは初めての子でしたがしっかりと母親をしています。

ユーユーは2011年中国生まれ、
父親のチャーミンは2011年鯖江市動物園生まれで、
ユーユーとペアを組むために2014年2月に来園しました。

昨年は、相性は悪くはないのですが、
グルーミングし合うなどのスキンシップが図れる距離に
近づくことがなかなかできずに交尾には至りませんでした。
もっともレッサーパンダの交尾期は2~4月くらいなので、
昨年は初同居がいきなり交尾期だったので
そりゃ無理だよな思っていました。
同居できただけでも大成功だったのです。
その後も同居は順調だったのですが、
チャーミンがじゃれ合おうと近づこうとするのですが、
ユーユーは何かが気に入らないらしく、
吊り橋の左右でにらみ合っていたり、
すれ違う時もそそくさとチャーミンから離れたりという状態が続いていました。

そして今年の交尾期を迎えました。
残念ながらお互いの距離は縮まらずに、
じゃれ合う姿や、ましてや交尾の確認もできませんでした。
うーんまだ若いし来年に期待かなと思いつつ交尾期は終わりました。

いつもと変わらず6月26日朝寝室の扉を開けると放飼場に出て行ったのですが、
夕方放飼場で出産していたのです。
胎盤の処理もしていたのですが子は死亡していました。
もしかしてもう一頭産む可能性もあるので急遽寝室に入れ落ち着かせました。
次の日産室の中に赤ちゃんが一頭、赤ちゃんに寄り添うユーユーがいました。

レッサーパンダの交尾の確認は発情期の行動などから、し易いと思っていました。
過去の出産例では必ず確認できていました。
チャーミンとユーユーはいつ交尾をしていたんだろう?
今までにはないペアーの形なんだろうか?
来年は観察カメラの設置も検討した方がいいのか?

とにかく今は、子が無事に成長するように見守っています。

2015年7月22日水曜日

動物たちの多様性を感じてもらいたい (平成27年7月)

さて6月中旬になり、飼育してきたカブトムシの幼虫32匹が蛹を経て続々と成虫になり
腐葉土の上に出てきました。
4月には32匹の幼虫は順調に成長していたのですが、
忙しくてちょっと世話をさぼり、5月下旬に慌てて大きな入れ物に移して蛹にさせようと思い、
慎重に腐葉土を掘っていくと、なんと蛹になっていました。

小型の衣装ケースだったので、過密な状態で皆ひしめき合って蛹室を作ったと思われ、
皆無事に蛹になれたでしょうか?
あえて掘り出さずに成虫になるのを待ちました。
現在28匹が無事成虫になりました。

昨年のオス親の成虫の大きさが78ミリくらいだったので、
それよりも大きな成虫になることを目指して、
自分としてはかなりまめに腐葉土を交換してきました。
結果80ミリの立派なオスが出てきました。
自己満足していたら、インターネットでカブトムシ大好きなタレントさんが
88ミリのカブトムシを育てギネスに申請!のニュースを見てしまいました。
ショックに言葉も出ませんでした。

カブトムシもクワガタムシも幼虫時代の栄養で成虫の大きさが決まります。
子供のころ製材所に積まれた木くずを取りに行っては幼虫を育て、
長い間木くずの交換をしないでいたら、
コガネムシかと目を疑うような小さな成虫になったのを思い出しました。
それにしても幼虫には大きく鋭いアゴがあり腐葉土を食べるのですが、
なぜ仲間を間違ってかじることがないのか、不思議です。

落ち葉や腐葉土を食べ分解しその糞が樹木の栄養になります。
成虫になると樹木からでる樹液を食べ栄養をつけ、
またたくさんの卵を腐葉土の中に産む、
きっと幼虫時代が生態系では大きな役割を果たしているのです。
僕たちはどうしても同じ空間、地上にいる姿を本来の姿と思いがちですが、
成虫は命のバトンタッチをする、ほんの短い期間の仮の姿とも言えるのかもしれません。

水中の世界もそうです。
水中が見えるガラス面がある水族館でイルカのショーがあると僕はひたすら水中を見ます。
水面上での姿よりも水中から飛び出す瞬間、着水してからの身のこなし、
水中での美しさに鳥肌が立つくらいに感動します。
水中が彼らの生活の場なんだと実感します。

空気よりも密度の高い水中で数百キロの体重があるのに、
あの鋭角的な動きでむち打ちにならないのかと心配になるくらいです。
ヒト基準じゃなく生き物の暮らしを覗いてみると、
ふと全くの別世界を感じることができる時があります。

多様な感性、感覚、能力があること、
その多様性をふと感じてもらえる動物園でありたいと思います。

2015年5月25日月曜日

新たな挑戦を続けていくために (平成27年5月)

さて恒例の閉園期間、一年で最も忙しい期間なのですが…
今年は過去経験のない早さでの雪解けでした。
閉園して一週間はひたすら雪割り、雪下ろしが全く必要ありません。
何か拍子抜けでのスタートでした。
例年夜にやる作業を日中からやるようにするなど工夫をしながら、
なんとすでにパネル作成や、ヒグマ、さる山のチップ入れ等々
追い込みで行う作業もこなしつつ日々に追われています。
なんと15日現在でこぶしのつぼみが膨らみ始めています。
桜の開花は4月27日と見ました。
さて結果はどうなっているでしょう?
開園の日に桜が満開!

動物園は従来の飼育展示係、管理係といった縦割りの組織を見直し
スタッフ制に移行したのですが、本格的に人的な交流を深め、
飼育をしていた職員を事務部門のスタッフに、
事務をやっていた職員を飼育部門のスタッフに内部で異動をしました。
旭山開園以来の大変革です。
新たな視点での取り組みや、仕事の価値観の共有など
大変だけど将来の旭山の大きな力になっていくと信じています。

役所的な発想で右と言われれば左を行く、
それが旭山の原点でもあるからこれからも前進するために、
飲み込まれないためにチャレンジは続けていかなければと思います。
とにかく皆一生懸命頑張っています。

今年の夏期開園からこども牧場の向かいにあったワシタカ舎を改築して
クジャク舎として生まれ変わりオープンします。
ワシタカ舎の鳥たちはバックヤードに繁殖用ケージを新設して引っ越しました。
クジャクの飛び回るたくましい姿を見ていただきたいなと考えました。
あの長い飾り羽根をぶら下げてほぼ垂直に飛び上がる姿は圧巻です。
鳥本来のたくましさを感じていただけるのではないかと思います。
現在担当者はいかにクジャクの習性を引き出せるのか、
止まり木の配置などに頭を悩ませているところです。
さてさてどんな獣舎に生まれ変わるか楽しみです。
こども牧場ではイヌの飼育も改めて始めます。
秋からの工事になりますがさる山のリフォームも控えています。
今年度もより豊かに命を感じられる場であるために努力をしていきたいと思います。