2013年1月31日木曜日

新年のごあいさつ (平成25年1月)

みなさんあけましておめでとうございます。
年末の雨、年始の大雪と明らかに気候は荒々しくなっています。
エゾシカたちはどうしているのでしょう?ふと気になりました。

明治時代に日中雨が降り夜になって雨が雪に変わり寒波が入ってきて、
エゾシカが大量に死亡したとの記録があります。
濡れた毛が凍り防寒機能が働かなかったためです。
でも今回は動物園で飼育しているエゾシカでさえケロッとしていたので、
そんなことは起こらないのでしょうね。
今年度の北海道での人為的なエゾシカ捕獲駆除目標数は15万頭、
ただの殺戮よりも自然現象の中で
あるがままに調整される方がいいのは明らかでしょう。

今年は巳年ですね。身近にもヘビはいます。
当然園内にもいます。
でも驚くほど多くの人が身近にはヘビがいないと思っています。
昔、警察所から市内の住宅街でヘビがでて
捕獲したので保護して欲しいと依頼がありました。
床掃除用のぞうきんを挟むモップでヘビの首を挟み持ってきました。
アオダイショウでした。
ヘビは昆虫やカエルやネズミ類を食べる肉食動物です。
ヘビがいると言うことは
生き物たちの豊かな営みがそこにはあると言うことです。
そんな豊かさを感じるアンテナが
僕たちの暮らし方の中から消えつつあるように感じます。
動物園は、命を大切にイコール助けること、殺さないことではなく
全体の調和や全体の仕組みを感じる
心を育てる場でありたいと思っています。

ヘビとトカゲ、脚のないトカゲがヘビ、
でも脚のないトカゲもいる…ヘビとトカゲはどこが違うの?
ちょっと調べてみてはいかがでしょうか

ちなみに僕の今年の目標は、
ヘビのように揺るがない信念を貫くこと、です。
すべての生き物によい一年でありますように。
今年の干支ヘビ(ゲンちゃん画伯)

2012年12月31日月曜日

向き合う (平成24年12月)

今年は特に早い一年でした。
そんな中で北海道産動物舎のリニューアルオープンを
無事に迎えることができました。
地元の動物を地元の動物園でしっかりと充実させたい、
という思いが昔からありました。

昔は飼育動物の半数以上が傷病鳥獣として保護されて
野性復帰できない動物たちでした。
その頃から感じていたのは自分たちも含めて
地元の生き物のことを知らないと言うことでした。

例えば明日キングペンギンが来るよ、と言われても
どのように飼育すればいいのか分かっているので
それほど困ることはありません。
でもシギの仲間が保護されたらまず種の同定から始まり、
図鑑的な知識を学び、どのような収容施設にするのかを考えます。

さらに治療の有無にかかわらず
強制的に餌を口に入れて食べさせていたのでは
やがてそのストレスで死んでしまうので、
自分から与えた餌を食べるようにしなければいけません。
実はこれがとても難しいのです。

本に書いてある習性ではなく、
環境の変化への反応や好奇心や警戒心、
食欲を刺激するきっかけなど
実際に向き合わなければ分からないことがとても多いからです。
そのたびに「こいつは凄い!」という思いを抱きました。
フィールドで観察するのとは違い、生き方を知ると
そこにいることがとても凄いことだと感じるようになります。
身近な自然の見え方が変わってきます。

自然を大切にと言いますが
実は何を大切にするのかを感覚で捉えている人は
少ないのではないでしょうか?
豊かな大地北海道と言いますが、
豊かとは何を指しているのでしょうか?
そんなことをふと考えさせられたり、
気づけたりできる施設を造らなければいけないとの思いがありました。
なんだ地元の動物か、なんて思わず足を運んで頂けたらと思います。

今年は何かとマイナス思考になる出来事が多くありましたが、
災い転じて福となす、来年でありたいと思います。

2012年11月30日金曜日

ライオンのライラ (平成24年11月)

もうじゅう館が出来てから、14年が経ちました。
もうじゅう館のオープンの前年、ライオンのライラ、レイラが来園しました。
来園時1才でした。

先代のベルとララがその年の一月に相次いで老衰で死亡したために
動物交換で旭山にやってきました。
ライラもレイラも落ち着きがなく、僕たちの動きに神経質に反応していました。
特にタオルを振り回すと怯えていました。
ライラもレイラも前足の爪がなく、
サーカスのような施設で飼育されていたようでした。

当園では調教という発想はないので、
狭い環境ながらもライオンとしてのプライドを傷つけないよう
細心の注意を払い飼育を始めました。
しっかりと子育てのできるライオンに育って欲しかったからです。
新しい施設でオス、メス、子供たちが野性のようなプライドと呼ばれる
群れを形成して暮らす姿を僕たちも見たかったのです。

2頭とも順調に大人になり、もうじゅう館に引っ越しました。
翌年、待望の赤ちゃんが生まれました。4頭です。
産室でメスのレイラと過ごし足腰もしっかりしてきた頃、
いよいよライラとの同居となりました。
野性でもメスは群れを離れ出産し、
子供が自分で歩けるようになってから群れに戻ってきます。

ライラは子供を受け入れてくれるでしょうか?緊張しました。
ライラを放飼場に出し続いてレイラと子供たちを出しました。
子供たちは始めて見る外の景色に緊張していました。
ライラも不思議なものを見るように戸惑っていました。

しばらくして子供たちは好奇心からライラに近寄り
たてがみにまとわりつき遊び始めました。
ライラはとまどい子供を軽く払いのけました。
子供がギャッと鳴きました。

するとレイラが駆け寄ってライラに思いっきりネコパンチをしたのです。
それ以来ライラは子供たちが近寄ってくると
ちょっと困ったように優しくじゃれるようになりました。
子供がちょっとでもギャッと鳴くとレイラが飛んでくるからです。
肉体的には圧倒的に強いライラが
レイラに対してとても優しい心遣いをしていました。

その後も何回か繁殖し
成長した子供たちは順調に他の動物園にもらわれていきました。
最後にアキラという子のもらい手が決まらずに繁殖を制限するため、
ここ数年はライラとレイラは別居させていました。
今年アキラが釧路市動物園にもらわれていきました。
ライラもレイラも初老になってしまいましたが久しぶりの同居となりました。
繁殖はダメでも最後は2頭で過ごさせてと考えていました。

先日急にライラの元気がなくなりました。
必死の原因究明と治療を行っています。なんと毛球症でした。
大量の毛玉を何度か排便し徐々に元気になりつつあります。
このまま順調に回復して欲しいと祈っています。
 ※現在ライラは順調に回復し展示を再開しております。