2013年7月31日水曜日

ホッキョク○○○ (平成25年7月)

遅い春の帳じりを合わせるかのような暑い日が続いたかと思えば、
暑さも一服で肌寒くなったり忙しい天気が続いています。
 子供を亡くしたキリンのマリモは、6月に入り交尾をしました。
来年の秋こそ無事に赤ちゃんが成育してくれるよう万全を期したいと思います。

6月の出来事としてオランダから輸入して、狂犬病の検疫のために
園内で6ヶ月間隔離飼育をしていたホッキョクギツネを
レッサーパンダの隣の施設に移し展示を始めました。
歴代のホッキョクギツネはとても華奢な体つきで、小顔でどこか気品がありました。
冬毛は見事に雪よりも白いほど真っ白で、
この小さな体で気温マイナス70度でも生きていける、
どこか神秘的でさえありました。

はるばるオランダからやってきたホッキョクギツネ、
厳重に改装した検疫用の隔離施設で初お目見え、皆目がテンになりました。
あの華奢なホッキョクギツネを想像していたのですが
輸送箱から出てきた姿はホッキョクダヌキ(そんな種はいません)か?
丸々とした骨太な体型小さいとは言えない顔、プヨプヨにたるんだ皮膚…
とても神秘的とは言い難い愛嬌のある姿をしていました。

ホッキョクギツネはヨーロッパ、シベリア、アラスカ、カナダと
分布域が広く多くの亜種があります。
ただし亜種による姿の差を明記したものは見あたりません。
こんなホッキョクギツネもいるんだね、みんなで強引に納得しました。
それでも見慣れてくるとこちらも洗脳されてきてホッキョクギツネらしく見えてきます。
肥満気味の体型も、徐々にダイエットをしてスリムになりました。
今はフワフワの白い冬毛が抜け落ち、
毛足の短い濃い灰色の夏毛に換わりつつあります。

始めて来園者にお披露目をした日の夕方、
これでまた寒さの素晴らしさを感じてもらえるんだと
見入っていたら、後の方で「アレ何?ずんぐりむっくりしてる」との声が…
僕は「…」。 

6月は、もう4年目になりますが天売島に海鳥の観察に行ってきました。
今年は例年よりもケイマフリやウトウの繁殖地の観察を入念に行いました。
合わせて野良猫の観察も。
天売島の島ニャンコは丸顔、
おしりプリプリでとても愛嬌のある個体が多いことが判明しました。
野良ネコ、野ネコが海鳥を補食する問題が発覚しているために
野良ネコ野ネコを馴致して里親を捜すプロジェクトが具体化しつつあるのですが、
こいつらの器量なら「いけるかも」と思いました。

これから夏本番です。皆さん短い夏を満喫しましょうね。

2013年6月30日日曜日

命をつなぐ (平成25年6月)

今年のゴールデンウィークは
自分の記憶にはないほどの悪天候で終始しました。
以降もパットしない天気でしたね。

それにしても5月の下旬になって桜が咲くなんて聞いたこともありませんね。
農作物やお米は大丈夫なのでしょうか?
僕たちの豊かな暮らしは土から生まれていることを
この時期に残雪を見ると切実に実感します。

大型草食獣館(仮称)ですが着実にその姿を表しつつあります。
ワクワクしてきました。名称は「きりん舎・かば館」でいかがでしょうか?
※先日この名称が正式に決定しました
シンプルでパンフレットにも表記しやすいし、
何よりもイベントなど案内時の園内放送でも
分かりやすいと思います。ひねりがなさ過ぎですかね…

秋のオープンに向けて楽しみにしていたのがキリンの誕生でした。
親子3頭での引っ越しを夢見ていました。
現在の施設でのやれることはすべてやり出産に備えました。

キリンの子は出産から2時間以内で起立し
母親の乳首に吸い付き授乳するのですが、
生まれた子は起立することができませんでした。
起立させる補助をしようにも、
母親が私たちが寝室にはいることを許さないため、
仕方なくどうにか母親を屋外放飼場に出し、
点滴、カテーテルでの授乳、保温を行い
夕方までにどうにか自力で起立できるまでになりました。
その間母親は外の放飼場にいましたが
盛んに扉の前に来て寝室内を気にしていました。

夕日が落ちた頃に寝室内で同居させました。
子は座り込んでいたのですが
母親は子の匂いをかぎ舐めていました。
育児を放棄していないことを確認し
一晩そのままにして徹夜で観察することとしました。

子は寝ている時間が長く
結局自力での起立、授乳には至りませんでした。
翌朝母親を外に出し、子の状態を確認しましたが、
想定以上に衰弱が進行していて回復させることができずに死亡しました。
寝室が2部屋しかなく、
親を夜間外に出しっ放しにはできないほど気温が低い中での
最善を尽くしたつもりですが残念な結果でした。
新居での新たな命の誕生を待つことになってしまいました。

そういえば、5月21日なんと園内でヒメギフチョウを見つけました。
こんなに遅くに、驚きでした。
ヒメギフチョウの寿命は1年ですが
その内サナギで約10ヶ月を過ごします。

4月下旬のほんの一時しか飛んでいる姿を見ないのですが
カタクリなどの花で吸蜜する姿はとても美しいです。
園内では在来種の植物をたくさん植えているのですが、
ヒメギフチョウの幼虫が食べるオクエゾサイシンも実はあります。
昨年は幼虫を3匹確認しました。
きっとその内の一匹なのかなと思うと嬉しくなりました。
写真を撮るのにちょっと捕まえてしばらく見とれて、
頑張れよと声をかけ放しました。

また幼虫見れるかな?

2013年5月31日金曜日

残雪の4月 (平成25年5月)

4月も下旬を迎えようとしているのに雪解けが進みません。
冬季開園が終わり、4月27日の夏期開園に向け
全員出勤で頑張っていますが、堆肥出しをするにも、
新たな土を入れるにも、遊具の補修、製作設置をするにも、
折れた人止め柵の補修をするにも
とにかく雪をなくさなければ始まりません。

一昔前の残雪から見れば少ないような気がしますが、
近年の雪解けの早さから見たら、うんざりする雪との格闘です。
ほっておいてもなくなるものとの闘いはどこかむなしい思いがあるのですが…
各獣舎とも担当者の新たな工夫が具体化しますので
是非足を運んでいただければと思います。

さて先日一泊四日(機中泊2日)の予定でボルネオに行ってきました。
強行日程でしたが、恩返しプロジェクトの本格的な成果になる
ルネオゾウの救助施設の第一期工事が完了し完成検査に行ってきました。
多くの企業の方々の協力を経ていよいよここまで来ました。

完成後はサバ州の野生生物局に引き渡し運用が始まります。
この施設は運用を通して改善点を探り
第2期工事に反映するための施設としての役割も持ちます。
マイナス気温からいきなり炎天下の30度を超える現場で
5時間過ごし帰路につきました。

ところがなんと機材の故障で予定の乗り継ぎで帰れなくなってしまいました。
帰国の次の日は北海道ブロックの園館長会議、
自分はブロックの代表理事、
穴を空けたら大変なことになります。
同じ便でクアラルンプールに帰る方の携帯で連絡をとってもらい
どうにか間に合う便を見つけ事なきを得ました。

自分はもう数年前から使っているガラケーでしかも日本でしか使えません。
やはりここはスマホかなと…
でもボルネオまで行って日常の仕事に追われるのもヤダな、複雑でした。
ともあれ園館長会議当日の朝に旭川に戻り無事会議も行うことができました。

夏期開園から北海道産動物舎も全面オープンを迎えます。
スタッフ皆が忙しくて嬉しい悲鳴が聞こえてくる
夏期開園にしていきたいと思います。