2015年12月16日水曜日

雌のキリンの名前が決まりました (平成27年12月)

冬期の閉園期間もあっという間に終わり、
厳冬期までに終わらせたい修繕などのスケジュール調整に追われています。
来園者に迷惑をかけないように閉園時間の3時半からスタートできるのですが、
なんせ日暮れが早いし寒いので…業者さんも大変です。
無理難題ばかり押しつけているようで申し訳ありません。

新しく来た雌のキリンの名前は「結(ゆい)」に決まりました。
動物たちも人も皆が結ばれるようにとの理由で命名していただきました。
たくさんの名前の応募があったのですが、
あまり思い入れが強すぎると背負う物が大きくなりすぎるし、
軽いノリでは死んだマリモに申し訳ない気がして選考は長時間になりました。

名前を公募するたびに思うのですが、
たくさんの方がさまざまな思いを持ち動物を迎え入れているんだなと、
改めてしっかりとした飼育をしなければいけないなと気が引き締まります。

結とゲンキの同居は順調に進みました。
当初はゲンキもそれほどしつこくはなかったのですが、
日を追うごとに常に結の後ろを追うようになってきました。
ほんと食べる時以外は半径5メートル以内にいなければ気が済まない程です。
マリモの時はゲンキの方が子供で旭山に来たので仕方がないなとも思っていましたが、
まだ小さな結に対してもつきまとうとは困った物です。
ただゲンキも仲間がいなかった期間が長く喜びも大きいのかもしれません。
毎日マリモの尻尾を咥えてついて歩きマリモの尻尾が脱落したのですが、
さすがに結はまだ小さくゲンキが頭を下げても咥えることができません。
その癖だけは忘れていて欲しいと願っています。
結は初積雪にも落ち着いていて雪が滑ることも学び、
滑り歩きも自分の物にしています。
結が来た当初長雨で地面がぬかるみ
適度に滑り歩きをしていたこともよかったのかもしれません。

話は変わりますが旭山はどこを掘っても粘土地で水はけは最悪です。
キリンの放飼場はかなり地盤の入れ替えをしたのですが
長雨が続くと厳しい物があります。
閉園期間中にぬかるんだ表層を取り除き再整備しました。
でこぼこのまま凍結すると事故につながりかねません。

この手紙のころ雪は積もっているのでしょうか?
今年の冬は早いのかななんて思いつつキーボードをたたいています。
動物にも皆さんにもよい年で終わりよい年越しができることを願います。
今年も一年ありがとうございました。 


2015年11月18日水曜日

雌のキリンを寝室に入れるのに四苦八苦 (平成27年11月)

さてさて、あっという間に夕方5時も過ぎると暗くなります。毎年思うのですが、
10月に入ると急に日が短くなり始めるように感じます。
365分の1づつのペースではないような…

9月に続き10月も週末になるたびに天気が崩れます。
なんか滅入ってしまいますね。

10月には無事にキリンの雌、イボイノシシ、
そしてレッサーパンダの仔のお披露目ができました。
新しい命を迎え入れること、誕生することはやはり嬉しいものです。
個人的にはイボイノシシの成長が楽しみです。
上顎の犬歯がどのように伸びていくのか、どこまで大きくなるのか、
どんな行動が観られるのか…興味は尽きません。

新しく来たキリンの旭山の環境への順応はとても順調です。
アメリカから飛行機で日本に来て、
2週間の検疫を行い陸路旭山にやってきました。
輸送檻をクレーンで獣舎の扉と向かい合わせに置き、
両方の扉を開け寝室内にキリンを迎え入れます。
通常だと輸送檻の居心地はよくないので、
初めての環境に足を踏み出す怖さよりも、
輸送檻から出たい意識の方が強く働くので、
一時間もすると意を決して輸送檻から出てくるのですが、
今回は長旅用の輸送檻で空間も広めで、
寝室のような落ち着く環境になってしまっていました。
いざ扉を開けても輸送檻から出てきません。
彼女のペースで寝室内を覗かせ環境の確認をさせ、
寝室内にはおいしいものもあるよと誘惑を試みました。
扉から首を伸ばして周りを見回し、
手からリンゴも受け取るのですが、前足の一歩がでません。
一呼吸入れて、檻の天井の隙間から細い棒で体を触り、
ここは居心地がよくないんだよ作戦に切り替えました。

キリンは檻の中でくるくる回り
出口から顔を出すのですがぴたりと止まります。
次に檻に張ってあった、
目隠しの板を外しさらに不愉快な環境にしました。
後一歩で寝室と言うところまでいくのですがダメです。
ここで深追いをするとパニックを起こし
取り返しのつかない事故になりかねません。
あくまで最後は自分の意思で一歩を踏み出させなければいけません。
また一呼吸入れてから、
天井からのプレッシャーをかけつつ檻の横からものぞき込み作戦としました。
移動開始からほぼ4時間、ついにキリンは寝室に入り旭山の住人になりました。
その後もとても順調です。
キリンの雄ゲンキもソワソワ、ワクワクです。 
これから冬を迎えます。
南方系の動物を飼育するのに冬がハンデだとは考えていませんが、
雪が積もると足が滑ることを覚えてもらうこと、これが一番のハードルです。
一度滑り歩きを覚えたらもう心配はいりません。
平地に雪が積もる日もすぐそこに迫っています。


旭山に来園した雌のキリン

2015年10月18日日曜日

イボイノシシがやって来た! (平成27年10月)

気温、気候の乱暴な変化が続きましたね。
皆さん体調管理は大丈夫ですか?

9月上旬にボルネオに完成させた、
ゾウのレスキューセンターに行ってきました。
今年から本格的にゾウの救助が始まりました。
まだミルクしか飲めない子ゾウの保護の急増など、
さまざまな課題が山積しています。
ただ「見える化」できたことで、見学者が訪れるようになる、
現地のマスコミに取り上げられるなど、
ボルネオでの現状に多くの人が関心を持つきっかけとして
大きな役割を持ちつつあります。

晴天なのですがスモッグが掛かり、
日差しが柔らかかったです。
エルニーニョの影響で、
カリマンタン側で大規模な山火事が続いているためだそうです。

その影響で昆虫の生活環に変化が出始めているようだとのことでした。
昆虫は植物の受粉には欠かせません。
植物の結実への影響、実を食べるオランウータンなど
動物への影響が出始めているようです。
予測よりも早くさまざまな気候変動と、
その影響が進んでいるように感じました。

今回の訪問のもう一つの大きな目的は、
恩返しプロジェクトに台湾の台北動物園が協力を申し出てくれたため、
台北動物園の園長も一緒にレスキューセンターなどを見学し、
サバ州野生生物局長など関係する中心メンバーと会議を行い、
今後の協力などについて議論をしました。
アジア圏の保全は欧米主導ではなくアジア圏で行いたい、
との意見の一致を見ました。
今年中にもう一回は行くことになりそうです。

さて、動物園ではいよいよきりん舎かば館のメンバーがそろいつつあります。
イボイノシシの雄が先発でアメリカの動物園から来ました。
まだ体重は25キロくらいと子供なのですが、
もうあのイボイノシシの風格を醸し出しています。
僕の中でのアフリカのイメージは、「大地」です。
大地と共に生きているのがイボイノシシです。
怖い顔と不釣り合いな細い足と尻尾。
ほふく前進をしながら餌を食べる姿…
皆さんのアフリカに対して抱くイメージを変えるかもしれませんよ!


イボイノシシのドゥニア