2015年4月19日日曜日

健康のために始めたペンギンの散歩 (平成27年4月)

もうすぐ新年度です。
記録的な少雪に妙に暖かい日が続きました。
とにかく冷え込みが緩かった、そんな印象でしたね。
そんな中ペンギンの散歩ですが、
例年3月からは一日一回にしているのですが、
今年は3月中旬まで一日二回の散歩となりました。

キングペンギンは気温がマイナス5度以下くらいになると
自ら水中に入るのを嫌うようになります。
魚は陸上で与えているのでますますです。
食っちゃ寝状態になります。
そこで、食事制限と考えるところですが、
よく動きよく食べる方が健康的なので、
キングペンギンは本来よく歩く鳥なので、
放飼場から出して散歩をさせようということから始めたことです。
最初は閉園後に行っていたのですが、
どうせならばと開園時間に行うこととしました。

平成14,15年度は本当にお客さんと散歩でした。
お客さんが今よりは少なかったからです。
それでも毎年10万人づつ増えていて
平成15年度は60万人を超え快挙と言われていたんですよ。
そして魔の16年度を迎えます。
一気に観光客が押し寄せるようになりました。
全く人員の足りない中でペンギンの散歩を続けました。
ルールは守ってもらえません。
ペンギンに触る人、ペンギンが取り囲まれる事態も生じました。
飼育係とお客さんのトラブルさらにはお客さん同士で場所取りの小競り合い…、
これが僕たちの求めていた結果なのか?何度ももう止めようと思いました。
散歩の出発前に、ルールマナーを守っていただけない場合は、
散歩を中断して引き返しますとアナウンスをしてから散歩に出かけました。
やり続け言い続け、今では完全とまでは言いませんが、
安心して散歩ができるようになりました。

話はそれましたが、キングペンギンの換羽は2月から4月に集中します。
3月は換羽中のペンギンが多くなり、
散歩にも出たがらなくなる個体が増えるために、
一日1回にするようにしていました。
今年はなぜか換羽の始まりが遅く一日2回が長くなりました。
ペンギンのために行っているのですが、
今年はお昼から来園されたお客さんもラッキーだったかもしれませんね。
雛2羽もキウィのような茶色のモコモコから親と同じ羽根に生え替わりました。
今年も雛の誕生を楽しみに、当たり前の冬が来ることを祈りたいと思います。

2015年3月18日水曜日

雄も雌も、子育てを学ぶ機会が必要です (平成27年3月)

原稿を書いている今は2月半ばの厳冬期、なはずなのに
じわじわと雪解けが進んでいます。
山の南斜面は土が見えている!どうしてしまったのでしょう。
このままだとペンギンの散歩が3月の早い時期に終了になるのではと、
あり得ないとは思うのですが、もしかしたらと心配になります。

オランウータンのリアンが第3子を出産しました。
7年ぶりの出産です。
子供から目を離しても心配なくなるまで排卵が止まるオランウータンなのですが、
それにしてもちょっと間が長かったのですが、無事出産しました。
モリト(7歳)が母親にべったりでリアンもなかなか子離れができずに
ジャックとの同居の苦労などいろいろありました。

飼育下では、本来ならばまだ母親と過ごしている3歳前後で
他の動物園に引っ越し新たな生活を始めることが一般的でした。

その理由は、新たな環境になじみやすい(飼育しやすい)、
2次性徴が始まってからだとペアの形成が難しい、
特に雌雄で体格差が大きいので事故の可能性がある(飼育が難しい)、
そして何より小さい方が可愛らしい(報道発表で受けがいい)…
よく考えると皆人間側の理由でした。

その結果、母親と過ごし、弟妹の誕生に立ち会い、子育てを共有し、独り立ちする
本来の成長過程を踏まないままに大人になるオランウータンが多くなりました。
雌雄で飼育しているのに繁殖しないペアーが多くなりました。
繁殖しても育児放棄し人工保育になってしまう場合も多くあります。
大人になると単独で生活するオランウータンの場合、
出産や子育ての学習の機会は
母親と過ごしている間の一回の出産に立ち会う時しかありません。

リアンの場合も6歳で当園に来たのですが弟妹ができる前でした。
リアン第1子出産の時は生みっぱなしで触ることもできませんでした。
介添保育を行い母親になりました。
第2子モリトの時はすぐに抱っこしたのですが、
胎盤の処理(食べてしまう)ができずに、へその緒の処置は僕たちで行いました。

メスの子の場合は、母親と過ごす時間はとても大切だと改めて思います。
ではオスの子は?
飼育下では交尾ができない、メスに対して乱暴といった問題が多くあります。

やはりオスの子も出産育児を共有することが大切なのではないか?
やんちゃでリアンももてあまし気味なので心配もあったのですが、
今回の出産はモリトも同居のまま行いました。

今回は完全に処理するまでではなかったのですが、胎盤も食べました。
しかもモリトも一緒にです。
母子2頭、口の周りが真っ赤でした。
そして母親が抱く子をそばでじっと見つめています。
そっと手を出すのですがリアンに怒られます…。
モリトはきっと立派なオスになる。
そう確信できました。

2015年2月17日火曜日

アムールトラのキリルとザリア (平成27年2月)

さてさて全く冷え込まない日々が続いています。
例年ならばあざらし館のプールの凍らせ作戦や、
雪あかりの動物園のための風船、
アイスキャンドル作りを始めていなければいけないのですが…
週間天気予報とのにらめっこが続いています。
雪も少ないし。
まぁ愚痴っていてもしかたがないのですが、
天候に逆らおうなんて考えてもしかたのないことです。
時を待つしかないのです。
っていいながらこの号がでる頃にはどうなっているのかとふと心配になります。

先日ネットでニュースを見ていたら、「沖縄でフラミンゴ」の記事が出ていました。
「もしかして!」「生きていたのか(^O^)」「沖縄で捕獲作戦か!」
「作戦はできている!」「沖縄なら楽しいかも(^O^)」等同時に複数の考えが頭を巡りました。
やはり未だに気になっている自分に気づかされました。

しかし冷静に写真を見ると、
羽根のこげ茶の模様、体型などから1~3歳くらいの亜成鳥であると思われ、
旭山のフラミンゴではないと判断できてしまいました。
どこから来たのか不明、とありましたが、
野生個体の亜成鳥が一羽でということは迷鳥としても考えにくく、
飼育下の個体と考えられます。
フラミンゴは個人でも飼育することが可能ですし、
昔は遊園地などでも飼育されていました。
沖縄でなければ近隣の国の飼育個体ということも十分に考えられます。

昨年9月にアメリカの動物園から来園したアムールトラ、
たくさんの方からお披露目はまだか?の問い合わせをいただいていました。
オスは5歳メスは4歳でもうすっかり成獣で、別々の動物園で生まれ飼育されてきました。
本来であればもっと早くにペアーを組んでいていい歳です。
個体情報から日本での一般的なトラの飼育方法とは
大分違う環境で育ってきたことがうかがえました。
朝寝室から放飼場、夕方放飼場から寝室というルールで飼育していないようでした。
成獣になってからの環境の変化、特に飼育の仕方の大きな変化への順化は時間がかかります。

というわけで、寝室から別の寝室への移動から始まり、
個体にストレスをかけないように徐々に旭山の飼育環境に慣れるように
じっくりと時間をかけました。
オスのキリルは後は放飼場に出すまでになっていたのですが、
「たくさんのお客さんを見ると興奮してパニックになる」という理解に苦しむ情報がありました。

そこで休園期間の正月に放飼場に出してみました。
複数の職員で見守っていたのですが、
当初は檻越しにアタックをしてきたのですがすぐに収まり
となりのライオンにも目を合わせるだけで興奮する様子もありませんでした。
一月の初旬からキリルの放飼、展示を始めました。
メスは?なかなか寝室でリラックスしてくれません。
もう少し時間が必要です。