2014年3月31日月曜日

動物も人間も同じなのかも (平成26年3月)

シジュウカラのさえずりも聞こえ始め春も近づいてきました。
2回目となった雪明かりの動物園も多くの市民に足を運んでいただき、
冬の寒さの生き物を包み込むような暖かさを
感じていただけたのではないかと感じています。

いや自分で言うのも何ですが冬の夜はとんでもなくいいです。
雪で音が吸収されてピント研ぎ澄まされた空気の中、
雪明かりの中で浮かび上がるように見える動物たちの姿は、
生きることの凄みのようなものを感じさせられました。

さて最近、モリトの弟妹まだかい?とよく聞かれます。
モリトも6歳、そろそろ弟妹が生まれていてもいい頃なのですが…。

オランウータンは、単独生活が基本です。
雄は発情期の間だけ雌と一緒にいて交尾をします。
発情期が終わるとまた別々に暮らします。
ですから旭山動物園でもリアン(母)とジャック(父)は別々に飼育しています。
雄は子育てに参加しないので、ヒトのような父親としてこどもを見ていません。

モリトが4歳になる頃リアンに排卵が始まった兆候が見られたので
ジャックとの同居を何回か試みました。
ジャックには基本リアンしか目に入りません。モリトは母親にしがみついています。
近づくジャックに怖さ半分好奇心半分でちょっかいを出したりしています。
リアンもモリトが気になってジャックが近づくと距離をとろうとします。
ジャックはモリトがリアンにとって
とても大事な存在なのはわかっているので無茶はしません。

根気強く同居を続けたのですが、ジャックはリアンとモリトが離れたときに
モリトを捕まえようとする行動を取り始めました。そう、リアンに近づくためです。
不慮の事故になりかねないので昨年来同居は中止していました。
リアンとモリトが距離を置いても(別々の部屋で過ごせる)
大丈夫になるまで待とうと考えました。

野生ならば生きるために大きくなったこどもに
かまい続けることはできないでしょう。
本能的にも次代に繋ぐために繁殖を強く望むでしょう。
こどもにもたくさんの刺激があり
親から離れるきっかけはたくさんあるはずです。
飼育下では生きることに不自由はありません。
大きくなった子が甘え続けても何の問題も起きません。

今年に入りここは心を鬼にしてと、
リアンとモリトを別々の部屋に入れて扉を閉めました。
モリトの叫び声と言ったらこちらの胸も張り裂けんばかりです。
お互いが見える窓の格子にしがみつき離れません。

次の朝、リアンは驚くほど冷静で、扉を開けるとさほど躊躇することなく
外の放飼場に出て行ってしまいました。
数日でお互いに存在が確認できれば安心なんだといわんばかりになっていました。

背中を押してあげないといけないときがある、
動物も人間も同じなのかもしれませんね。

2014年2月28日金曜日

ザブコ (平成26年2月)

どか雪に厳しい寒さ、冬こそ旭山とはいえさすがに厳しいです。
トイレの水洗化、非公開猛禽類繁殖ケージ、きりん舎かば館の外構工事
過酷ともいえる中での工事が続いています。

でも安定した過酷な寒さはいいこともあります。アイスキャンドル作りです。
昨年から始めた雪明かりの動物園のために制作しています。
閉園後の3時半、職員総出で一日数百個の風船に水を入れ吊します。
抱きかかえて運ぶのですが、破裂すると悲惨です。結構過酷な作業です。
寒さが安定していると「歩留まり」が高くなります。

2年目で要領がよくなってきたこともあるのですが、
きれいなキャンドルが続々と完成しています。
今年も東川町に協力をいただき、
一足先に開催された「ひがしかわ氷まつり」で使われた
キャンドルもたくさんいただきました。

ちょっとザブコに思うことを書かせてもらいます。
開園から旭山動物園に関わり続けている生き物はと考えると
ヒトは誰もいません。
退職などバトンタッチをして顔ぶれは変わっています。
ザブコとワニだけがずーっと旭山動物園で過ごしていたのです。
自分が就職した昭和61年からでも先輩飼育係は全員退職して
自分以外は皆入れ替わっています。
ザブコの目には旭山の46年はどのように映っているのかと
思いながら働いていました。

自分にとっては旭山での唯一の同僚みたいなところがあって、
偉大な先輩でもあり、ザブコに教えられて育てられた自分がいるように思います。
飼育、飼育環境、繁殖、誕生、成長、老い、死に備えること、そして死。
命を預かることの意味や責任を考えさせられ、
自分なりにこうあるべきなのではないのかと
考えられるように導いてくれたのがザブコなのかなと思っています。

きりん舎かば館は、百吉が来園して今までの50年これからの50年、
ザブコと百吉が時間をかけてバトンタッチをする施設になると考えていました。
百吉には深いプールを、ザブコには土の放飼場を、と決めていました。

動物園では動物たちが持っている能力、感性、感覚の
ほんの一部しか発現していません。
少しでも多くその動物らしさを発揮できるようにし、
そのことが生き生きとした姿に繋がり、多くの人の心を引きつけてきました。
ザブコに足の裏から伝わる土を感じさせてやりたい、
46年間コンクリートしか感じたことのない
ザブコに、土の感触がザブコも知らなかったよりカバらしい
感性や感覚が覚醒すると思っていました。

僕の中ではザブコに対しての最大のプレゼントであり「ありがとう」だと考えていました。
ザブコの死、百吉の成長…
旭山動物園はこれからも命を繋ぐ場であり続けたいと思います。

2014年1月31日金曜日

河馬 (平成26年1月)

関係者の皆さんのご協力やスタッフの頑張りにより、
「きりん舎・かば館」を無事にオープンすることができました。

中でもかば館は、どうしたらカバのありのままの生態を
見てもらえるか、お客さんに楽しんでもらえるかを考えた結果、
自分たちでも見たことがない秘められていたカバのすばらしい、
だけど、どこかユーモラスな行動や仕草をたくさん引き出すことができました。

百吉はまるでマナティかジュゴンのようです。

今では息を止めて7分位水中ですごし、水面に鼻と目と耳だけを出し
息継ぎだけしてまた潜っていきます。

水面から水底から、そして、水中から百吉を観ようとすると
3回息継ぎ分になるので、あっという間に30分くらいが
経過します。

カバは陸上の草を食べますが、一日の大半を水中で
過ごしています。水中で交尾し水中で出産します。
ただ休むため寝るために水中にいる訳ではないのです。

これから百吉がどのように成長していくかがとても楽しみです。
そして、早く伴侶を探してあげなければと考えています。

最新の研究でカバとクジラ類は遺伝的にとても近い
仲間だとの見解が示されていました。

そんなわけないだろ 何でもDNAじゃないだろと思ってましたが、
水面に浮上する百吉の姿はクジラを連想してしまいます。
「クジラの親戚」という表現が妙に説得力を持つのです。

今年は馬年です。カバは漢字で河の馬です。
百吉のウマのような仕草を見つけてみようかなと
ふと思ったりしています。